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2008年3月
過ぎたるは及ばざるが如し
 アイドリング時にブレーキを数回踏むとエンストしてしまうという、平成12年式のエブリィ(車両型式GD-DA52V、エンジン型式F6A)のトラブル事例を紹介する。
  症状を確認すると、確かに暖機後のアイドリング時にブレーキを素早く数回踏むと、エンジン回転が落ち込んでしまい、エンストしてしまう。
  ブレーキを踏むとストップランプが点灯するために電気負荷が増えるが、もちろんエンストしてしまうほどの負荷ではないため、エンジン本体の能力が低下しているのではないかと考えた。
  吸気マニホールド側の負圧を測定したところ、アイドリング時が−380粂gと若干弱かったために、バルブ・クリアランスを調整するように伝えた。
  それから数日後、「ブレーキを踏んだときのエンジン回転の落ち込みは良くなったが、パワー・ウインドウを作動させると、エンジン回転が落ち込んでしまい、エンストすることがある」との相談で、再度、当会に入庫となった。
  今回はアイドリング時の吸入負圧が−500粂gと問題のない数値であったため、いよいよエンジン本体の能力の限界なのであろうかと考えながらエンジンルーム内を見ていたところ、何やら見慣れない形のバッテリーが目についた。
  この車のバッテリーにしては大きいなと思い、バッテリー容量を調べてみると、何と815CCAという、超大容量のものであった。
  参考までに、このバッテリーはオプティマバッテリーといい、「スパイラルセル技術により他社の同サイズのバッテリーと比較し、鉛の表面積が50〜100%増加。その結果、始動パワーを増し、より大きな容量を確保する事が可能となり、さらに内部抵抗が非常に低いため、パワーが増し、長寿命をもたらしている。バッテリーは完全密閉の為、通常のバッテリーのように熱によって水が蒸発してしまい希硫酸の濃度が上がりバッテリーの寿命を短くすることはない」というものらしい。
  ただし、十分な充電を必要とするために、「比較的頻繁にかつ長距離走行をするユーザー向け」とのこと。
  今回は、オプティマバッテリーが弱っており、この超大容量バッテリーを充電するのにオルタネータがフル稼働状態となり、この状態でさらに電気負荷が加わると、エンジンが負荷に耐えられずにエンストしてしまっていた。
  確認のため、オルタネータのカプラを取り外してパワー・ウインドウを作動させると、エンジン回転は下がらず、安定したままであった。
  どんなものでも高性能版を取り付ければよいというわけではなく、使用する車、使用条件など、その車に適したものを取り付けることが非常に重要なのである。
《技術相談窓口》
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