実践!整備事例一覧 > 整備事例  

Page 12
2009年10月
スロットルチャンバ内の正しい清掃方法
〔エンジンECUを壊してしまわないために〕

 アイドリングが保てず、アクセルペダルから足を離すとエンストしてしまう、'02年式のスズキ・ラパン(UA-HE21S エンジン型式K6A、走行距離49,000km)のトラブル事例を紹介する。
 汎用スキャンツール(日立モバイル・HDM−2000)でECUのパラメータをデーターモニターしてみると、ISCのステップ数は変化しているにもかかわらず、まったくアイドリングが効かない。
 ISC自体の不良と判断して、同じエンジンが搭載されているワゴンRの物と交換してみたが、あいかわらずアイドリングが保てない状態だったとの事。
 そこで、逆にラパンのISCをワゴンRに取り付けてみると、正常に機能するのでISCは悪くないと判断した。
 ここまでの点検を相談者がおこない、これから先をどうすれば良いのかを持ちかけてきた。
 この時点でラパンのECUが怪しい事に気が付くのだが、残念ながらECUはカプラの形状が異なるので、交換して様子をみるという手段がとれないために相談してきた訳である。
 ラパンのISCの4つのコイルの抵抗値を測定するよう電話で伝えたところ、3つは30Ω弱であるが、残りの1つは6Ωだったとの返事があった。(図参照)
 これでECUが不良である事が確認できた。
 ISCのコイルが今回のようにショート気味になると、それを駆動するECU内のトランジスタに過大電流が流れ、熱によって壊れてしまうのである。
 スキャンツールで調べた時にステップ数が変化していたのは、ECU内部のCPUがトランジスタを制御する目標値であって、結果を示しているものではないからである。
 したがって、ショート気味になっているISCを正常な車に取り付けると、悪くもないECUを壊してしまうリスクがあるので、このような点検は絶対に避けなければならない。
 ISCがショート気味になる一因として、自動車メーカーが警告しているように、スロットルチャンバー内を清掃する目的で洗浄スプレー類を吹き込む事で、その溶剤がシャフトとボディのすき間から侵入し、コイル表面にコーティングされた絶縁用のエナメルを溶かしてしまって、レアショート(層間短絡)を起すのである。
 スロットルチャンバー内を洗浄する場合は、別記のとおり間接的に洗浄スプレーを用いるようにしなければならない。
 ISCとECUを新品に交換するとアイドリングが保てるようになり、始動直後のファーストアイドル制御や、エアコン等の負荷よるアイドリングアップも効くようになった。
 ちなみに部品代は、セットで9万円弱である。
〔技術相談窓口〕


図 ISC駆動回路と単体点検要領

点検
・イグニッションスイッチがOFFであることを確認した後、ISCバルブのカプラを外しステッパモータのコイルの抵抗(1−2、3−2、4−5、6−5の各端子間の抵抗)を測定し、基準値内におさまっているか点検する。


  端子間抵抗基準値(一本当り):28〜32Ω(20℃)

  基準値を外れている場合は、ISCバルブを交換する。

・イグニッションスイッチをON→OFF及びOFF→ONしたときに、ISCのイニシャライズ音がすることを確認する。
異常があった場合は、ISC作動波形(1C1−22)、ハーネスの導通(ECM〜ISCバルブ間)、コネクタの接続、ISCバルブの単体点検を行う。

 
1 / 2

実践!整備事例一覧 > 整備事例
UP