暖機後のアイドリング中にエンストする事があるという、’04年式のプレミオ(CBA-NZZ240、エンジン型式1NZ、走行距離9万km)のトラブル事例。
診断を依頼してきた整備工場でスパーク・プラグを交換してユーザーに渡したが、不具合解決には至らず、その後ディーラーに持ち込んで調べてもらって、ISCVを新しい物と取り替えて納車するも、あいかわらずエンストが発生するとの相談である。
スキャンツールを接続してデータ・モニタしていると、600rpmのスペック値付近で回っていたエンジンが突然エンストした。
その間の各種センサ類の信号には、何も異常は認められなかった。
エンスト直後の再始動性は特に問題はなく、一発で始動できたが、しばらくアイドリングを続けていると、再び同じようにエンストしてしまった。
ISCの作動状況を調べても充分に余裕があり、スロットル・チャンバーのメーン通路の汚れもなさそうである。
ロータリ・ソレノイド式ISCは、非通電状態時にエアバルブがデフォルト位置で固定されるため、約1,200rpm前後のエンジン回転に保たれるので、この事を応用してエンストの不具合が発生するかどうかを試してみた。
その結果、エンストは発生しなくなった。
ISCのカプラを元に戻すとアイドル回転は600rpmまで低下して、その数分後にエンストが発生した。
点火信号あるいは、インジェクタの駆動信号のいずれかが停止するのではなく、両方が同時に停止しているように感じられるので、エンジン回転信号(クランク角センサ)を波形観測してみる事にした。
観測の結果、エンジン回転信号のピーク値(P-P)が一定せず、電圧も1.5Vしかなかった。(図1参照)。
これではエンジンECUは回転信号を検出できず、エンストするのもむりはない。早速クランク角センサの単体点検をおこなってみると、基準値の1,000倍以上もの抵抗値を示した。
新しいセンサの抵抗値は1.3KΩで、アイドル回転時の信号電圧も、P-P値4Vに達しており、エンストの発生も皆無になった。
今回のような場合、ジェネレータ式センサの特性である回転速度に比例して信号電圧が変化するという事が、ダイアグノーシスに検出されない結果になって、手がかりが少ないトラブルシューティングを余儀なくされるので、スキャンツールだけでは解決に至らず、最終的にはオシロスコープで原因究明ができた次第である。 |