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2010年12月
ペダルを踏むと点灯するABS 警告灯
〈システム全体の点検を入念に…〉

ブレーキペダルを踏むと、ABS やTRC の警告灯が点灯するという平成16年式のフェアレディーZ(UA-Z33、エンジン型式VQ35、走行距離2万5千km)のトラブル事例を紹介する。

ユーザーがディーラーで調べてもらったところ、ABS アクチェーターの圧力センサ異常なので、アクチェーターをアッセンブリーで交換する必要があるとの結果を聞き、新品は高額なので中古部品と取り換えるために町工場に作業を依頼してきた経緯である。

しかし中古部品と交換したが、相変わらずブレーキペダルを1回踏んだだけで、ABS等の警告灯が点灯するので、原因究明のために当会に車が持ち込まれてきた。

スキャンツール(HDM-3000)を接続して調べてみると、DTC「C1142」圧力センサ信号系異常を記憶していた。

一度メモリーを消去して、正常コードを確認したのちにブレーキペダルを踏んでみると、前述同様に警告灯が点灯して同じDTCを表示した。

スキャンツールをデータモニター画面に切り替えて、圧力センサの信号を調べてみると、0〜88bar の間でペダル踏力に応じて変化しているのが確認できた。

これを見る限り、圧力センサには問題ないと思われるが、警告灯が点灯するという事実がある以上、なんらかのロジック異常があると考えざるを得ない。

ABS やトラクション・コントロール機能が正しく働くために必要な信号や出力をすべてモニターしてみると、「フートブレーキペダルを踏んだ」という信号がOFF のままになっていることが判明した。

ペダルを踏んだままの状態にして車の後方に廻ってみると、ストップランプ(LED)の一部しか点灯していなかった。

ペダルストッパを兼ねたストップランプ・スイッチの端子電圧を測定してみると、3V前後の電圧しか発生していなかった。

何回かペダルをポンピングすると、12V 以上になってストップランプが正常に点灯するようになった。

原因はストップランプ・スイッチの接点不良である。

ペダルを踏んだときに、前述のような中途半端な電圧になった場合、ABS コントロール・ユニットはブレーキ信号ON と判定せず、ペダルを踏んでいないのに圧力センサがブレーキ圧力の発生を検出するために、通常ではあり得ないロジックとして警告する訳である。(図参照)

ストップランプが白熱電球式であれば、スイッチの接点に接触不良があった場合はまったく点灯しないからそのことで先に気がついたと思われるが、LED 式のためわずかな電圧でも点灯してしまうので、気づかなかったのであろう。

ストップランプ・スイッチを交換すると電圧が正常になり、警告灯が点灯することもなくなった。

DTC を鵜呑みにし、アクチェーター不良という診断結果に基づいて、悪くもない部品を交換して、その挙句に不具合が治っていないではユーザーに申し訳ない。

システム全体の点検をしっかりおこなう習慣を身につける必要がある。

それには、スキャンツールが必要不可欠である。


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