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2011年3月
固定観念の危険性

エンジンがかからないという、プレオ(平成11年式、車両型式GF−RA1、エンジン型式EN07)の卜ラブル事例を紹介する。

経緯を聞いてみたところ、悪路を走行中に車がバウンドし、着地した直後にエンスト。その後始動不能になり、火花が飛ばず、インジェクターの作動音もしないとのこと。

確認してみると、確かに火花が飛ばずにインジェクターの作動音も確認できなかった。もちろん、電源・アースも問題ない。

火花が飛ばず、インジェクターも作動していない場合は、回転信号が入力されていないことがほとんどである。

このため、回転信号をオシロスコープで確認したところ、なんと正常に信号を出力していた。

回転信号が入力されているのに、なぜ点火や燃料がカットされているだろうかと考えていたところ、「自動車が着地した直後から」という話を思い出した。

ひょっとしたらタイミングベルトがずれて不具合が発生しているのかもしれないと思い、タイミングベルトの合いマークを確認してみると、カムプーリー側で5山ずれていた。

タイミングベルトをかけなおしクランキングをすると、何事も無かったかのように始動でき、吹け上がりも良好であった。

エンジンが始動できない場合にフェイルセーフが働き、点火も燃料もカットするのだろうかと思い、試しに燃料ポンプリレーを外してクランキングしてみたが、火花も飛びインジェクターも作動する。

このことから、バルブタイミングのズレが大きすぎた場合にエンジンコンピューターがフェイルセーフに入ってしまい、点火も燃料もカットするものと思われる。

今までは、燃料は出ているが火花が飛ばない場合は点火系のみのトラブル、火花は飛ぶが燃料が出ていない場合は燃料系統のトラブル、火花も燃料も出ていない場合は回転信号系もしくはECU 関連のトラブルと考えていたが、例外が存在した。

固定観念を持ったまま作業を行うと、思わぬ落とし穴にはまってしまうことがある。常に柔軟な思考をもつことが重要だと考えさせられた一件であった。


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