信号等での減速時にエンジン警告灯が点灯し、エンジンが振れてエンストすることがあるという平成9年式のクラウン(車両型式E-JZS155、エンジン型式2JZ-GE)のトラブル事例を紹介する。
詳しく問診を行うと、不具合は必ずアクセルペタルをOFFにした後に発生することがわかった。
アクセルペタルOFF時に発生するトラブルは、ISCV系に関するものが多いのだが、ISCV系のトラブルと違うところは、エンジン不調になってエンストするということである。
通常、こういった場合の原因は空燃比のズレによることが多いのだが、EGRやVVTの誤作動も考えておかなければならない。
まず、ダイアグノーシスを点検すると、コード12(クランク角、カム角センサー系)とコード59(VVT異常)を表示した。消去後も同じコードを表示。
通常、トヨタ車のダイアグコード12はクランク角センサーやカム角センサーの信号に異常があった場合に表示されるのだが、今回のような症状は出ないはずなので資料を調べると、平成9年7月以降のクラウンは、クランク角センサーとカム角センサーの位相差があった場合もコード12を表示するようになっていた。(1UZや年式の新しいクラウンは位相差をコード18で表示)
この位相差は、クランク角センサーとカム角センサーの位相にズレが生じたということであり、タイミングベルトのズレやVVTの作動不良で表示するのではないかと思われる。
また、コード59は目標のVVT 作動角と実際の作動角にズレが生じた場合に表示するようになっていた。
この2つのコードから、VVTの作動不良が原因と推定された。
念のため、VVTを作動させるOCV(オイルコントロールバルブ)のコネクタを外して走行してみると、それまで頻繁に発生していた不具合が発生しなくなった。
OCVのコネクタを接続し、工場に戻ろうとしたらアイドル不調が発生した。
そのままの状態で工場に戻り、エンジンを止めてOCVを外してみた。
OCVはVVTアクチュエータの進角室や遅角室への油路を切り替えるバルブで、内部にプランジャーがありそのプランジャーはECUからの信号で動いている。
通常、ECUからの信号がない場合やアイドリング時、始動時は最遅角状態にならなければいけないので、プランジャーはスプリングの力で最も右側に動いてないといけない。(図1)
しかし、外したOCVのプランジャーを先細のマイナスドライバーで動かしてみると、更に右側に2mmほど動いた。
つまり、プランジャーは最遅角状態になっていなかったわけである。
アイドリング時に最遅角状態になっていなかったということは、進角していた可能性がある。もし、進角状態になっていたのであれば、オーバーラップが大きくなり内部EGR量が大きくなっていたはずである。
当然、アイドル不調になったりエンストが発生するわけである。
また、プランジャーをマイナスドライバーでフルストローク動かしてみたが、一部動きがスムーズではなかった。
キャブクリーナーで清掃を行ってみたが、頻度は減ったものの不具合は発生するので新品に交換した。
新しい車は、外部診断機のデーターモニター機能で目標のVVT作動角と実際の作動角を調べることができるので、このトラブルは簡単に判断できるが、このクラウンのように診断機が対応していない場合はOCVのコネクタを外して様子をみたり、プランジャーの動きで判断するしかないようである。 |