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2012年1月
走行レンジにシフトした時のショック大

走行レンジにシフトしたときのショックが大きい、また、D レンジに入れたままにしておくと不規則にショックを感じるという平成12年式ワゴンR(GF-MC21S)のトラブル事例を紹介する。

症状を確認すると、P レンジからR レンジにシフトした時やN レンジからD レンジまたはR レンジにシフトした時に「ガツン」とかなりのショックを感じた。ただし、シフトしてからショックを感じるまでの時間(タイムラグ)は1秒以内であり正常だった。

このタイムラグが長い場合は、ミッション内部の機械的不具合(アキュムレータやピストンの動き不良)が考えられる。

一般的にシフト時のショックが大きい原因はマウントの不良やライン圧の高過ぎが考えられるが、マウントは問題なかった。

このライン圧というのは、ミッション内部のクラッチやブレーキにかかる油圧のことをいい、アクセル開度に比例して変化するようになっている。

アクセル開度が小さいときは、クラッチ類の接続ショックを少なくするためにライン圧は小さくし、アクセル開度が大きくなるにつれて、クラッチ類の滑りを防止するために圧力を大きくしていくのである。

まず、ライン圧を決めるためのスロットルセンサーの信号を診断機で調べたが正常だった。(アイドルで0.8V、アクセル開度に比例して大きくなった)

また、ライン圧はECU からの信号で制御しているので、ライン圧ソレノイドの通電状態も調べたが、アクセル開度に比例して変化しており問題なかった。

このライン圧はAT 油圧計で測定できるので点検すると、アイドル状態で約10kg/cm2もあった。ストール時(ブレーキを踏んでDレンジでアクセル全開)はほぼ基準値どおりの13kg/cm2であった。

アイドル時の基準値は4kg/cm2なので10kg/cm2もあればショックが出るはずである。

ミッション内部の不良ではないかと思ったが、ライン圧ソレノイドの抵抗値を測定すると、基準値の3Ω に対して測定値は21Ω であった。

制御の信号は正しいのだが、ライン圧ソレノイドの抵抗値が大きいために作動せず、ライン圧が高いままになっておりシフト時にショックが出たようである。

AT 油圧計を持っている工場は少ないと思うので、こういったトラブルの場合は、スロットセンサーとライン圧ソレノイドを調べることを勧める。

参考までに、ライン圧ソレノイドは単体設定があり、オイルパンを外せば交換は可能である。


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