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2014年6月
情報を活用した整備事例

故障診断の方法には様々な方法があるが、通常は問診、現象確認、基本点検、そしてそれらから原因を絞り込んでいくというのが一般的な手法である。

この方法は、確実に原因を絞り込んでいくことが出来るが、原因の箇所によっては時間がかかる場合もある。

もう1つの方法は、情報(故障事例等)を活用してピンポイントで原因を見つけるという方法である。

こちらは、原因が事例と同じであれば早く見つけることができるが、原因が情報と違っていた時は、原因を見つけることが出来ないという欠点がある。

どちらがいいとか悪いというわけではなく、それぞれを上手く使い分ける必要があるのではないだろうか。

特に最近はインターネットの普及により様々な情報があふれており、日本中で起こった事例を簡単に検索することが出来るようになった。

その情報の1つとして、日整連が行っているインターネットを活用して整備事業者に様々な情報を提供しているファイネスの中に「故障事例」というものがあるのでこれを参考にするのも1つの手である。

今月はインターネットを活用した事例を紹介する。

 

【事例1】

車は平成14年式ザッツ(車両型式LAJD1、エンジン型式E07Z)で、キーを差し込み、そのままクランキングするとエンジンがかからないという電話相談。

ただし、キースイッチをONにして3秒ほどしてからクランキングすると、何事もなかったかのように始動できるという。

また、その3秒間はメーター内のスピードメーターやタコメーターの指針が、細かく上下に震えるという奇妙なトラブルである。

メーターの作動不良とエンジン始動不良という2つの不具合が同時に出たということで、原因が別々とは思えない。

現象確認から言えば、メーターとエンジンECUに共通した電源やアースの点検が必要であるが、こういった奇妙な現象は事例を調べたほうが簡単に原因が見つかることがある。

ファイネスでこの車の整備事例欄を見ると「始動性不良」という事例があった。

内容を要約すると、「キーを差して、すぐに回した時に始動不能。キーONで3秒してからクランキングすると始動性良好。また、ルームランプ不灯・ドアロック不動・メーター針の初期化動作が見られた。」となっていた。

また、もう1つの事例では、「エンジンが始動しない。イグニション・スイッチONでコンビネーション・メータ内のすべての針が細かく振れる」と、相談された車の現象とほぼ同じであった。

原因はともに12(バックアップ)ヒューズ切れだった。

依頼者に調べてもらったことろ、事例通りに12のヒューズが切れていた。

故障診断の手順通りに行えば1時間はかかったかもしれないトラブルが、情報を活用したことにより5分ですんだのである。

 

【事例2】

車は平成22年式マーチ(車両型式DBA-K13)で、CVTから異音がするが、同じような事例はないかという問い合わせ。

平成22年式であれば経年変化によるトラブルとは考えにくく、もしかしたら材質や構造に問題があるのかもしれない。

比較的新しい車のトラブルは、ユーザーも不審に思うせいかインターネット上にアップされていることが多いのである。

さっそく「マーチK13 CVT 異音」というキーワードを入れて検索してみた。

すると、上位のほうに「日産:リコール関連情報マーチのサービスキャンペーンについて」という記事が目に付いた。

詳しく読んでみると、不具合状況も年式もサービスキャンペーンに該当するものだった。

このことを相談者に説明し、ディーラーさんに相談するよう伝えた。

このサービスキャンペーンのことを知らずにCVTを交換していれば、ユーザーさんに多大な金銭的な負担をかけていただけではなく、整備工場の信頼も失うところであった。

 

【事例3】

車は平成20年式クラウン・ハイブリッド(車両型式DAA-GSW204)で、車検で入庫しておりブレーキの制動力を測定しているのだが、リヤブレーキの制動力は問題ないがフロントブレーキの制動力がほとんど出ないという電話相談。

走行に支障があるのではないかと聞くと、工場内を走行するのに特に効きが悪いとは感じなかったという。

この年式で壊れるとは思えないし、もしフロントブレーキの制動力がほぼゼロであれば走行に支障があるはず。

それが問題ないとなると、制動力検査時になんらかの制御が働いているのではないかと考えた。

トヨタのハイブリッド車は検査時には整備モードにしないといけないのだが、整備モードになっていないのではないかと思い確認したが、依頼者からは整備モードで測定しているという返事をもらった。

もしかしたら解説書や修理書に注意書きなどがあるかもしれないと思いファイネスで調べてみた。

すると「この車は、車速0km/hの時は、消費電力低減のため制動力を走行時の50%に抑える機能があるので、制動力は低くなる。」となっていたが、それでも制動力がゼロになるとはなっていなかった。

ファイネスの整備事例に同じ事例がないかと思い探したが、同じ症状の事例はなかった。何の気なしに他の項目に目をやると、「技術情報」の中に「ハイブリッド車における、制動力検査時の留意事項」という項目を見つけた。

これは2010年10月号に技術情報に記載されたもので、特定のハイブリッド車(別紙参照)の修理書の訂正を行ったものだった。

内容は、制動力試験は整備モードではなく通常のモードで測定するように変更になっていた。

さっそく依頼者に連絡し、制動力だけは整備モードを解除して測定してもらったところ、正常な制動力になったということであった。

この情報がなければ解決できなかった事例である。

毎月目を通している技術情報であるが全ての項目を覚えることは不可能であり、ファイネスは非常に便利なものである。

このように情報を上手く利用することで効率的な故障診断ができるが、注意しなければいけないことがある。

1つは、その情報を信用しないこと。

インターネットには多くの情報があふれているが、必ずしも正しい情報とは限らないのである。

2つ目は、情報だけを頼りにしないこと。

同じ事例があったからと言って、原因も同じとは限らない。その部品を点検もせずに交換するのは絶対に行ってはいけないことである。

インターネットの普及により多くの情報が簡単に手に入る便利な時代である。

また、車の修理に必要な情報である修理書や配線図が、そのインターネットで手に入るのがファイネスである。

こんな便利なものを利用しない手はないだろう。

 

ファイネスについての質問や申込みについては、振興会業務課までご連絡ください。(097-511-3311)

《技術相談窓口》

 


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