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2014年9月
ECUの良否を判断する方法のひとつ

走行中にエンストし、その後、始動不能になったという平成7年式クレスタ(車両型式E-JZX90、エンジン型式1JZ-GE)のトラブル事例を紹介する。

クランキング時に火花が飛ばないということで、イグニッション・コイル、イグナイタ、ディストリビュータは交換済みである。

基本点検を行うと、火花は飛んでいないがインジェクタはクランキング初期だけ動いていた。

ダイアグノーシスを点検すると、コード14(点火系異常)を表示した。

トヨタ車はイグナイタに点火指示信号(IGt)を出力して、火花が飛べばイグナイタから火花が飛んだという点火確認信号(IGf)をECUに返す。

この点火確認信号が、3回続けて返ってこないとダイアグノーシスコード14を表示する。

イグナイタ部で点火指示信号(IGt)と点火確認信号(IGf)をオシロスコープで調べたが、共に信号が発生していなかった。

調べると点火指示信号はECU部から出力されていない。

点火指示信号の配線やイグナイタ内でアースとショートしている可能性があるので調べたがそれも問題なかった。

点火指示信号の基になるエンジン回転信号(Ne信号とG信号)を調べたが正常に入力されていた。

エンジン回転信号が入力されているにも関わらず、点火指示信号が出力されないということはECU自体の不良である。

ECUは高価なものなので、交換する決断がつかないものであるが、そういった場合はECU内を点検するのも一つの方法である。

ECU不良を目視で判断出来るのは、内部が焼けている場合とコンデンサーからの液漏れがある場合が多い。

特に、「キースイッチONでチェックランプが点灯しない」、「ダイアグノーシスが点検できない」、「外部診断機との通信ができない」といった場合はECU不良の可能性がある。

ECU内が焼けていたことはあまり多くないが、この場合は臭いや目視で簡単に判断できることが多い。中にはECUを振ると「コロコロ」と焼けて破壊された部品が動きまわっていることもあった。

コンデンサーの液漏れは、以前は三菱車やスズキ車が多かったが、平成になってからは平成12年くらいまでのトヨタ車及びホンダ車のビート(PP1)等で多く経験している。

ECU内には数個のコンデンサーが使われているが、そのコンデンサーの真下を見ると、通常、緑色の基盤なのだが黒ずんでいれば液漏れしていることになる。

広範囲に漏れていれば比較的わかりやすいが、コンデンサーの真下に直径2mm程度漏れていたこともあるし、基盤には漏れてなくてコンデンサーの足に緑色の腐食があったり、足の部分のハンダ部分の艶がなかったりしたものもあった。

こういった軽度の漏れの判断は難しいかもしれないが、明らかに漏れていると判断できたものはECU不良と判断してもいいと思われる。

ただし、コンデンサーの液漏れが発生しているからといって、ECUがその不具合の原因とは断定できないのでご注意を願いたい。

また、修理する場合は、新品や中古品は無いことが多いので、リビルト品に交換することを勧める。

なお、中古品と交換する場合は、必ずカバーを開けてコンデンサーからの液漏れがないことを確認してから交換する必要がある。

《技術相談窓口》


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