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平成14年7月
0.2Vの特性ズレがトラブルの原因

  車は平成5年式チェイサー(車両型式E−JZX90、エンジン型式1JZ−GE)アイドリング時にエンジンが振れるといったトラブル事例を紹介する。
 エンジンが振れる場合、まず特定のシリンダが失火しているのか、全体的な空燃比のずれによるものなのかを判断する必要がある。
 特定のシリンダの失火かどうかを調べるために、プラグコードを1本ずつ抜いていくパワーバランステストを行った。しかし、プラグコードを抜いたときのエンジン回転の落ち込みは、全シリンダ共ほとんど変わらなかった。特定のシリンダの失火ではないようだった。
 空燃比はどうだろうかと、外部診断機(HDM−2000)でO2センサーの電圧を点検すると、ほぼ0Vであり、空燃比状態はリーン(薄い)を表示していた。O2センサーの不良も考えられるが、強制的に濃い状態を作るために、フューエルリターンホースをカットしてみた。すると、失火はなくなりエンジン回転が若干上がった。その状態で回転を上げるとO2センサーの電圧は1V付近まで高くなった。このことからO2センサーの不良ではなく、空燃比が薄すぎることによる失火であることが確認できた。
 それから、念のためダイアグノーシスを点検したが正常コードを出力した。
 空燃比が薄くなる原因として燃圧があるので測定すると、アイドル時に約2.5kg/cm2あり正常だった。
 吸気系のエア吸いは考えにくかったが、念のため、ブレーキクリーナーをインテークマニホールドガスケットに吹きかけたが、エンジンには変化がなく、エア吸いもなさそうである。
 こうなると制御系の点検をしなければいけないが、O2センサーの信号を調べたとき、主だった信号は見たつもりである。
 再度、詳しく点検するためにサーキットテスタで、センサー類の点検を行うことにした。
 まず、空燃比に最も大きな影響を与えるバキュームセンサーである。アイドリング時は、1.6Vと電圧だけを見れば良かった。しかし、このアイドル時1.6Vというのは、バキュームセンサーにインテークマニホールド負圧が正しく(約−500mmHg)かかっていることが前提である。
 バキュームゲージでバキュームセンサーにかかっている負圧を測ると、−400mmHgしかない。なのに、−500mmHg分の1.6Vを出力している。マイティバックで−500mmHgの負圧をかけると1.4Vになった。基準よりも0.2Vほど低い電圧を出力していた。これでは燃料が足りないはずである。
 念のため大気圧状態での電圧を測定すると、3.6Vないといけないのに3.4Vしか出力してない。センサーの電源、アースは問題ないので、センサー自体の特性ずれである。
 このように、たかだか0.2Vとはいえ、空燃比に最も影響を与えるセンサーの場合、このようなことがあるので、測定にはテスターの性能を含め充分注意が必要である。
 参考までに、トヨタ車のバキュームセンサーの特性は、ターボ車とノンターボ車の2通り(図1)しかなく、車種やエンジンが違っても、コネクタさえ合えば使用できるので、怪しいと思ったら交換してみるもの1つの手である。        《技術相談窓口》

図1 バキュームセンサー(ターボプレッシャーセンサー)の特性図

図2 ロード・センシング・プロポーショニング・バルブの取付状態とその特性
《参考》 バキュームセンサ
バキュームセンサはサージタンクとゴムホースで接続されており吸気管圧力を検出するセンサです。
 バキュームセンサは結晶(シリコン)に応力を加えると、その電気抵抗が変化する性質(ピエゾ抵抗効果)を利用した半導体式圧力センサで、吸気管圧力(絶対圧)を電気信号として検出します。
 真空に保たれたセンサユニット内にシリコンチップが取り付けられており、その片面に吸気管圧力が作用する構造となっています。センサに吸気管圧力が作用すると、シリコンチップは真空室との圧力差に応じた応力を受け、抵抗値が変化しこれを内蔵のハイブリッドICで電圧に変換し増幅して、ECUに吸気管圧力信号として送っています。
絶対圧
真空を0としたときの圧力です。
大気圧は、場所(海岸と山岳地)、天候により常に変化して、バキュームセンサで絶対圧を検出することにより、高地などでも大気圧の変化の影響を受けず、常に正しい吸気管圧力を検出できます。

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