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平成14年10月
ガソリン・エンジンの3要素 パート2(良い点火火花編)
先月号の「良い燃料」に続いて、今回は「良い点火火花」についての、トラブル事例を紹介する。
点火装置は、十分に圧縮された混合気に、電気火花によって引火した後、火炎核が燃焼室全体に燃え広がる事で、その爆発圧力がピストンを押し下げて動力を発生している事は周知のとおりである。
点火火花の点検は、取り外したスパークプラグの電極部分に火花が発生するかどうかでおこなうのが一般的であるが、それだけでは判断できない事が起きるのも現実である。
〔事例1〕
平成7年式のファミリア(E−BHALP、エンジン型式Z5、走行距離4万2千km)が、加速時に息つきするという不具合を訴えてきた。
状況を確認すると、暖機が進むにつれて息つきが発生しやすく、エアコン等の負荷が増すほど、不具合現象は激しくなる。
暖機するにつれて悪くなるという事から、空燃比が薄いのではないかと考え、フューエル・リターンをカットしてみたが、少し良くなる程度で完全ではなかった。
スパークプラグの焼け具合いを見ると、くすぶっているので、やはり空燃比によるものではない事が判った。
これまでに、スパークプラグ、プラグコード、ディストリビュータのキャップとローターを交換しているとの事なので、イグニッションコイルを除く、高電圧回路はすべて新しくなっている訳である。
スパークプラグの代りに、ドライバーを差しこんだプラグコードとエンジン金属部分とのすき間を1壕ネ上設けて火花テストをおこなってみると、弱々しい細いスパークが確認できた。
この事から、イグニッションコイルの不良と判断される。大気圧状態で、1mmのエアギャップに力強いスパークが確認できても、燃焼室内は10倍以上の圧力になるのだからイグニッションコイルがしっかりしていないと、「良い火花」は飛ばせない訳である。
したがって、火花テストを燃焼室内と同レベルの条件にするために、エアギャップを10倍の1cmにしておこなえばよい。
この車のイグニッションコイルは、最近増えつつあるディストリビュータ組み込みタイプになっており、コイルだけの部品供給はないので、ディストリビュータAssy交換となる。(図1参照)
図1
点火コイル、イグナイタ、クランク角センサ等がコンプリート
されたディストリビュータ(上段中央にあるのが点火コイル)
部品交換後は、息つきも解消してスムーズに加速するようになった。
〔事例2〕
平成10年式のカルディナバン(R−ET196V、エンジン型式5E−FE、走行距離9万2千km)の加速不良に関する不具合の診断依頼。
工場では、プラグコードを交換したが、直らないとの事で、車が持ち込まれた。
走ってみると、激しく息つきして、その様子から体感的に点火系によるものと思われる。
この車の点火装置は図2のような、2気筒同時点火システムであるため、ディストリビュータが存在しない。
燃焼状態を調べるために、スパークプラグを取り外してみて驚いた。
なんとエアギャップが1.5mm以上になっており、中心電極はやせ細っていた。
リース車のメインテナンスを任されている工場なので、これまでの整備履歴を調べてもらったところ、一度もスパークプラグは交換していない事が判った。
白金プラグが装着されていないのだから、とっくに寿命を過ぎている。
しかも同時点火という構造上、本来力強い火花が飛ばなければならない、圧縮行程の気筒ではなく、圧力が低いバルブオーバーラップ側の気筒にスパークしやすくなるので、息つきが顕著になってしまう。
ディストリビュータが無いエンジンのすべてに白金プラグが取り付けられている訳ではないので、その辺りの点検はしっかりとおこなわなければならない。《技術相談窓口》
図2
2気筒同時点火方式の原理図
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