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平成15年1月
電子制御式エア・サスペンションの点検

 今月は電子制御式エア・サスペンションシステム(以下、エアサス)のトラブルシュートについて紹介する。
 そもそも、エアサスとは、車高センサの信号により車高を検出し、目標とする車高より低ければ、エアコンプレッサを作動させ、その圧縮空気をエアスプリング(図1トヨタ車の呼称はニューマチックシリンダ)に送りこむことによって車高を上げる。また、逆に目 標の車高より高くなれば、エアスプリング内の圧縮空気を抜き車高を下げると言ったシンプルなシステムである。
 しかし、このシンプルであるシステムがなかなか思うように制御してくれないのである。
 次に紹介する方法は、メーカーの修理書に載っているわけではなく、正しいかどうか定かではないが、今までの経験に基づく方法なので参考にしてもらいたい。
 車は平成4年式クラウンマジェスタ(車両型式E−JZS149)車が左に傾いているといったトラブル事例。
 まず、車内を見ると市販品と思われる「車高調整コントローラ」が付いていた。以前、この「車高調整コントローラ」の誤作動により車高が正しく制御されなかったことがあったので、こういうものは取り外すべきである。しかし、取り外しても変化無かったので修理にとりかかることにした。
 車高が低くなる原因としては、エアコンプレッサの不良、各部からのエア洩れ、車高センサの不良、あとはほとんどないがECUの不良である。
 この車の前後左右の車高を見ると、フロント左が極端に低い。次にリヤ左が低いようだ。(これはフロント左が低くなっているせいと思われた。)あきらかに車高が低いのだからコンプレッサが回って車高を上げようとしてもよさそうである。
 しかし、エンジンをかけてもコンプレッサの回る音は聞こえない。ここがエアサスの分からない所である。今回のように、極端に車高が下がってしまうと、どういうわけか制御をしない。ある程度車高を上げてやる必要があるのである。
 エアコンプレッサが回って車高が上がらないことには、エアコンプレッサや、エア洩れ、車高センサの点検といったことができないのである。
 車高を強制的に上げるには、エアコンプレッサを回して、各エアスプリングの配管途中にあるソレノイドを開ける必要があるが、トヨタ車には便利なことにそれができる車高調整コネクタ(図2〜図5参照)がある。
 この車の場合、フロント左を上げるには、図2のコネクタの1番、3番、7番端子をショートさせる。(1番が電源で、1番、7番端子をショートするとエアコンプレッサが回る。また、1番、3番端子をショートさせると、エアコンプレッサとフロント左のエアスプリング途中のソレノイドが開く)
 これで車高が上がらなければ吐出圧(約6kg/cm)が低いか多量のエア洩れである。上がるようであればエアコンプレッサは良いことになる。
 同じように、1番、5番、7番端子をショートさせリヤ左も上げた。4輪がそこそこの車高になったところでエンジンを止める。数時間経って車高が下がるようであれば配管の継ぎ目、エアスプリングからの洩れということになる。
 ただし、注意しなければならないのは、エアスプリングからの洩れは、ある車高のときに洩れることがあるということである。これは、エアスプリングのローリングダイアグラムの折れ曲がり位置が変化することにより起こるためである。これを確認するためには、エアサスが作動しないようにヒューズを抜いたり、ECUのコネクタを抜いて、しばらく乗ってみることである。これで下がるようなら洩れということになる。
 洩れがないということになると、後は車高センサの点検・調整である。
 車高センサの点検は、車によって違うが、3本線の可変抵抗式であれば、センサのロッドをゆっくり動かした時に、0V近くから5V近くまで、ロッドの動きに比例して変化すればよい。
 センサ単体が良ければ、次は調整である。車高調整コネクタで四輪とも正しい車高にし、車高センサの電圧が2.5Vになるようにロッドの長さを調整する。
 洩れがなくて、センサの信号が正しければ車高は変化しないはずである。(車高センサの基準電圧は、修理書を参考のこと)これでも変化するようであればECUの不良と言うことになる。(事例としては過去には1件も無い。)
 次に載せているのは、平成11年5月号に1度掲載したものであるが、問い合わせが多いので再度掲載する。工場に同種トラブルが入庫した際の参考としていただきたい。なお、トヨタ車以外には、この車高調整コネクタは無いが、ECUの端子部でエアコンプレッサ及びソレノイドの開閉を行えば、同じように点検できることを付け加えておく。
《技術相談窓口》



車高調整コネクタの場所 ショート
させる
端子番号
※サスペンション制御スイッチの場所
セルシオ(10系) 図2(トランク右) 表A 図6(トランクルーム左)
セルシオ(20系) 図3(運転席) 表B
クラウン(13#系)
(H5.8以降のセダンのみ)
図2(トランク右)
助手席足元(グローBOX下)
表A
表A

クラウン・HT(14#系) 図2(トランク右) 表A 図7(グローボックス内)
クラウン・マジェスタ(14#系) 図2(トランク右) 表A 図7(グローボックス内)
クラウン・マジェスタ(15#系) 図4(運転席) 表C
ソアラ(20系) 図5(トランク左) 表A
ソアラ(30系) 図5(トランク左) 表A 図6(トランクルーム左)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7

表A
ニューマチックシリンダー&タンク
エア充てん
エア排出
右フロントニューマチックシリンダー&チャンバ
1−2,1−7
1−2,1−6
左フロントニューマチックシリンダー&チャンバ
1−3,1−7
1−3,1−6
右リヤニューマチックシリンダー&チャンバ
1−4,1−7
1−4,1−6
左リヤニューマチックシリンダー&チャンバ
1−5,1−7
1−5,1−6

表B
ニューマチックシリンダー&タンク
エア充てん
エア排出
右フロントニューマチックシリンダー
3−2,3−6
3−2,3−7
左フロントニューマチックシリンダー
3−1,3−6
3−1,3−7
右リヤニューマチックシリンダー
3−9,3−6
3−9,3−7
左リヤニューマチックシリンダー
3−8,3−6
3−8,3−7

表C
ニューマチックシリンダー&タンク
エア充てん
エア排出
右フロントニューマチックシリンダー
A2−A1,A3
A2−A1,A4
左フロントニューマチックシリンダー
A2−A7,A3
A2−A7,A4
右リヤニューマチックシリンダー
A2−B6,A3
A2−B6,A4
左リヤニューマチックシリンダー
A2−B5,A3
A2−B5,A4

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