平成15年2月
暖機後もアイドル回転が下がらない
〔ケミカル用品の功罪〕
エンジン暖機後も、ファーストアイドルが効いたままで、アイドル回転が2000rpmから下がらない、’95年式のインテグラ(E-DB6、エンジン型式ZC、走行距離10万km)のトラブル事例を紹介する。
燃料供給装置は、ホンダ車ならではのCV型ツインキャブレター方式である。
アイドル回転を上げる要素は、チョークバルブが作動する暖機途中や、エアコン作動時のアイドルアップおよび、ダッシュポットなどである。
それらを制御するアクチェータの状態を調べてみると、チョークのファーストアイドルカムが作用したままになっている事が判った。
チョークの戻し機構は、エンジンの冷却水温度によって、サーモワックスが膨張する事で、ファーストアイドルを解除する仕組になっている。(図1)
エンジンの温度は電動ファンが作動するほどの状態であるから、冷却水の温度が低いという事はありえない。
サーモワックス部分に手を触れてみると、熱いというよりも暖かい程度なので、非接触式の温度計で各部の温度を測定してみた。
その結果、エンジンのサーモスタットハウジング部が85℃あるのに対して、キャブレターのサーモワックス部分では55℃しかなかった。
サーモワックスが正常に機能するかどうかを確認するために、ドライヤーで加熱してみると、70℃になったところでアイドル回転が700rpmまで下がったので、問題なしと判断した。
この事から、冷却水の循環が良くないために、サーモワックスの温度が充分に上がらずファーストアイドルが解除されないものと、診断される。
LLCを交換しなかったりすると、ウォーターポンプのインペラが磨耗してしまい、同様の事が発生する場合があるので、ヒーターの効き具合を点検してみたが、まったく問題なかった。
そうなると、冷却系統全体の循環が悪いのではなく、部分的に流れが悪くなっていると考えられる。
図2に示すように、ラジエータやヒーターコアに接続されているホースよりも、インテークマニホールドおよびキャブレターのサーモワックス部分へのホースやパイプは、細い物が使われているので、人間の血管同様に詰まりやすい傾向にある。
ホース類を外して、冷却水の通路を清掃した後は、サーモワックス部分の温度と、エンジン本体との差がなくなって、スムーズに回転が下がるようになった。
あとになって判った事だが、この症状が起きる1カ月前に、冷却水の漏れをガソリンスタンドで指摘され、その場で「漏れ止め剤」を注入したらしい。
内部で凝固する事によって水漏れを防ぐ漏れ止め剤が、細い通路を詰まらせたものと推測される。
人体同様、薬には効果がある反面、副作用がある事を忘れてはならない。
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