平成15年5月
発進時に発生する息つき
発進時に息つきするというヴィヴィオ(車両型式KK3、エンジン型式E07A)のトラブル事例を紹介する。
一口に息つきと言っても、発進時や加速時に発生するものや、高回転やフル加速時に発生するものというふうに、発生状況はさまざまである。
また、息つきの原因として一般的に考えられるのは、燃料不足(または燃料カット)と火花が飛ばないことによる失火である。
この息つきの発生状況と原因には、少なからず関連があると思われる。
まず、発進時や低回転の加速時に発生する息つきは、点火系に原因があることが多いようである。
次に、高回転やフル加速時に発生する息つきは、燃料不足(燃料カット)やイグニッションコイルの容量不足に起因するようである。
今回のトラブル車は、発進時に発生するトラブルなので点火系から調べることにした。
点火系の点検といっても、息つきの場合は特にリークの点検が重要である。
通常、点火系のリークは、プラグコード先端部からリークすることが多いが、もちろんプラグ、ディスキャップ、ロータ、イグニッションコイル、センターコードからのリークもあり得るので、これら全てを点検する必要がある。
この中で気をつけなければならないのは、プラグコードからのリークである。アイドリングでミスしているような場合は、リーク痕がわかりやすく、時には穴が開いている場合もあるくらいだから見つけやすいが、発進時にリークするような場合は、リーク痕が分かりにくいので注意して点検する必要がある。
この車の点火系のリークを調べたが、それらしき形跡はなかった。
リークではないのかと思い、イグニッションコイルの容量不足、またはレアショートの点検を行った。
このイグニッションコイルの容量、レアショートの点検というのは、特に決められてはいないが(エンジンスコープがあれば、イグニッションコイルの最大出力電圧によりおよその判断はできる)、1cmのギャップをつくり火花が飛べば良好と考えてよさそうである。(詳しくは、本誌の2003年3月号を参照のこと)
この車のイグニッションコイルを調べたが、こちらも問題なかった。
点火系ではないのかと思い、次は燃料系を調べることにした。
ただ、燃料不足だとある回転数以上は不調が続くので、症状からは考えにくかったが、念のため調べてみることにした。
燃料に関連するものとして、燃圧、バキュームセンサ、スロットルセンサの点検を行ったが、特に問題はなさそうだった。
こうなると、他に原因らしきところが見当たらなくなった。
症状からは、どうみても点火系のリークに思えるので、点火系に見落としはないかと、プラグコードを再度点検することにした。
しかし、プラグコードの周りを見てもリーク痕らしいものは見当たらなかった。
以前のトラブル事例をよく思い出してみると、確かに息つきの場合、プラグコードの先端部外周からのリークが多かったが、内部(プラグと接触する部分)からリークしていたものが2件ほどあったので調べてみた。
すると、2番シリンダのプラグコード内側にリーク痕があった。また、3番シリンダの方も怪しかったので、全てを交換することにした。
交換後、試乗するとトラブルは発生しなくなった。
今回のように、息つきの直接の原因は、確かにプラグコードからのリークである。しかし、リークするようになった原因は、材質に問題があるのかもしれないが、リークするエンジンのほとんどのプラグのギャップが、基準値を超える広さになっていることがその要因の一つになっているのではないだろうか。プラグギャップが広くなることにより、火花が飛びにくくなり、それに加え、水や錆などにより電気の通りやすい状況が作られると、リークするのではないかと思われる。基準値を超えないように調整または交換していれば、リークしなかったという保障はないが、少なくともトラブルが発生する時期が遅くなったに違いないと思われる。
白金プラグの採用や、プラグの脱着がしにくくなったせいか、プラグのメンテナンスがおろそかになったように思える。
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