平成15年6月
エアコン・インジケータ・ランプの点滅が意味するものは…
毎年この時期になると、エアコンに関する技術相談が多くなるが、今回はその中でも比較的発生しやすいトラブルについて、実例を基に紹介する。
エアコンのスイッチを入れると、風は吹き出すが冷えないという、’91年式のクレスタ(E−JZX81 エンジン型式1JZ−GE)の事例。
コンプレッサーのマグネットクラッチへの通電状態を調べたところ、電圧が供給されていないとの事であった。
マグネットクラッチに直接バッテリ電圧を加えるという、一般的な方法で試してみたがそれでもマグネットクラッチは作動しないので、当会へ相談がもちかけられた。
電話があった時に、エアコン・インジケータランプの状態を尋ねてみると、点滅をくり返しているという返事が得られた。
これは「コンプレッサーロック」の警告を意味するものである。
1本のベルトで複数の補機類を駆動する都合上、コンプレッサーのロックによってベルトへの負荷が増大して、他の補機が正常に作動しなくなって、運転性や安全性をそこなうのを防止するために、マグネットクラッチへの通電を休止するシステムである。
そのシステムは図のようになっており、コンプレッサー内部に設けられたピックアップコイルからの回転信号と、点火パルスを基にしたエンジンの回転信号との差を、エアコンアンプが監視しており、コンプレッサーの回転が重くなってロック状態に近くなると、ベルトがスリップし、両者の回転速度の差が大きくなると、マグネットクラッチへの通電を停止するとともに、運転者に警告を伺すのである。
今回の車の場合は、コンプレッサーはロックしていないが、マグネットクラッチのトラブルが原因でコンプレッサーが回転しないために、エアコンアンプはスリップ率100%と判断して故障警告をしていた訳である。
マグネットクラッチのコイルの導通テストをしてもらったところ、数キロオームの抵抗がある事が判った。
通常のそれは、数オーム前後が一般的であるので、当然マグネットクラッチを吸引するだけの力は無い。
この場合は、マグネットクラッチを交換すれば解決する。
それ以外の原因でこれと同じようになる事例を紹介する。
1つめはコンプレッサー内のピックアップコイルが断線したり、カプラ部で接触不良が発生して回転信号が正しく入力されない場合である。
2つめはマグネットクラッチにエンジンオイルやパワーステアリングフルードが付着した事によって、スリップした事例もある。
3つめは古い車に起りがちな事例で、マグネットクラッチへの通電回路の途中に接触抵抗が生じて電圧降下が発生して、マグネットクラッチの電磁コイルへの印加電圧が低下するために、十分な吸引力が得られず、コンプレッサーの負荷に負けてスリップしてしまう場合がある。
この場合は、抵触不良箇所を修理するか、バイパスリレーを新設すれば解決する。
いずれにしても、一度スリップしたマグネットクラッチは、交換しないと本来の機能を発揮する事はできない。
〔技術相談窓口〕
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