平成15年9月
電子制御式ジーゼル・エンジンのエンスト
走行レンジにシフトした時にエンストしたり、アイドリングが不安定だったりする、平成8年式キャラバン(車両型式ARE24,エンジン型式TD27ETi)のトラブル事例を紹介する。
エンジンを始動してしばらくすると、走行レンジにシフトしなくてもエンストした。エンストする前にチェックエンジンランプが点灯していたので、ダイアグノーシスを点検した。すると、コード表にないトラブルコードや読み取りが出来ないコードを表示した。
通常、こういった場合は、コンピュータ系の不良である。そこでコンピュータの電源とアースを調べたが問題なかった。
コンピュータ自体の不良かと思ったが、回路図をよく調べると、コンピュータ本体アースになっていることが分かった。
コンピュータの端子電圧を調べようとボデーからコンピュータを外したために、異常な制御をしていたようだった。コンピュータにもアース端子があったが、エンジンを始動し大きな電流が流れると、そのアース端子だけでは無理があったようである。
コンピュータ本体にアースを取ってやるとエンストの頻度は減り、ダイアグコードも正常に出力するようになった。
調べるとコード18(燃料噴射量フィードバック系2)とコード22(燃料噴射量フィードバック系1)を表示した。
この車のエンジンは、電子制御式ジーゼルエンジンで、各センサの信号を基にコンピュータが燃料噴射量を決定し、エレクトリックガバナに信号を出すようになっている。そのエレクトリックガバナによりコントロールスリーブが動き、実際の燃料噴射量が変わるのだが、コントロールスリーブがどのくらい動いたかというのをコントロールスリーブポジションセンサで検出し、コンピュータにフィードバックしている。
これが燃料噴射量フィードバックシステムだが、コントロールスリーブがコンピュータの信号どおりに動かないときに、前述の異常コードを出力するのである。
こういったトラブルは初めてなので、どうやって調べればいいのか分からなかったが、とりあえずエレクトリックガバナヘの出力信号、コントロールスリーブからの入力信号をオシロスコープを使い調べることにした。
コンピュータを外し各端子を調べたが、信号自体は入出力されていた。ただし、それぞれの相関関係までは分からないので、コントロールスリーブが、コンピュータの信号どおりに動いているかどうかまでは判断できなかった。
また、エレクトリックガバナとコントロールスリーブポジションセンサを単体で抵抗を調べたが問題なかった。
各信号線の断線、ショートがないことがわかったので、あとはインジェクションポンプか、コンピュータの不良である。
どちらも高価な部品なので、おいそれと交換するわけにはいかない。どうしようかと思っていたが、知り合いに同車種の車を持っている人がいたので、コンピュータを借りることにした。
しかし、コンピュータを交換しても症状は変わらず同じだった。
こうなるとインジェクションポンプの不良ということになる。しかし、実はこの車、1ヶ月ほど前に、同じようなトラブルで中古のインジェクションポンプと交換しているのである。その後は調子よかったのだが、最近、またエンストするようになったのである。
前の時は中古だったので、今回はリンク品に交換することにした。
後日、結果を確認すると、交換後は調子よくなったということである。
インジェクションポンプが悪かったようだが、どこが悪かったのかを調べるために、最初に交換したインジェクションポンプを、依頼者の工場からもらい分解して調べてみた。
すると、エレクトリックガバナのシャフトとコントロールスリーブの結合部にガタがあった。
はっきりしたことは言えないが、精密に制御をしているはずのコントロールスリーブ部に、こういったガタがあるのは考えにくい。この、ガタのために、エレクトリックガバナの動きに対して、コントロールスリーブの動きが追従できずに今回のトラブルが発生したのではないだろうか。
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