実践!整備事例一覧表 > 整備事例


平成15年11月
ダイアグノーシスコネクタを活用したトラブル

 暖機後の再始動時、エンジンがかからないという平成4年式のクラウン(車両型式E−JZS149、エンジン型式2JZ−GE)のトラブル事例を紹介する。
 エンジンが掛からないということで、基本点検を実施。
 ダイアグノーシスは正常コードを出力。エンジンが掛からない時に火花点検をすると、良い火花が飛んでいた。インジェクタの作動音も良好。燃圧を点検すると1.5kg/cm2しかない。
 通常、燃圧は2kg/cm2以上なければいけないはずである。最近のエンジンでは3kg/cm2以上のものも増えてきている。
 こういった時には、フューエルポンプリレーがONし、フューエルポンプに通電されているかどうかを調べなければならない。ただ、フューエルポンプのコネクタは、一般的にリヤシートの下などにあるために点検するのが面倒である。
 しかし、トヨタ車には便利なものがあり、簡単に点検することができるようになっている。(ただし、ここ2、3年なくなってきている)
 エンジンルーム内にダイアグノーシスコネクタというものがあり、その中のFp端子はフューエルポンプリレーから分岐してきたものである。(図1図2参照)
 クランキング時、このFp端子にバッテリ電圧がかかっていれば、フューエルポンプリレーはONしていることになる。もし、この時Fp端子が0Vであれば、フューエルポンプリレーがONしていないか、リレーまでの電源が供給されてないことになる。
 どちらが悪いのかというのを調べるためには、同じダイアグノーシスコネクタ内の+Bという端子を点検すればよい。バッテリ電圧以外であれば電源側の不良。
 +B端子にバッテリ電圧が来ていて、+BとFp端子を短絡してフューエルポンプが回ればリレーがONしてないことになる。逆に、回らなければフューエルポンプが不良ということである。(ただし、本線とダイアグノーシスコネクタ間の配線が正常の場合に限る)
 この車の+B端子をクランキング時に点検すると13.5Vだった。
 +BとFp端子を短絡すると、燃圧は3kg/cm2まであがり、クランキングすると始動することができた。
 こうなると、フューエルポンプリレーがONしてないということになる。
 この車のフューエルポンプの回路を調べると、図3のようになっており、通常のON、OFFするだけの単純なリレーではなかった。
 この車の場合、フューエルポンプコントローラといい、エンジン状態(燃料の噴射時間、エンジン回転)により、フューエルポンプ端子電圧を切り替えるようになっていた。
 簡単にいえば、燃料をあまり必要としない低回転、低負荷時は、フューエルポンプ端子に8V前後の電圧しかかけずに、ポンプの負荷を減らし、作動音を小さくしている。また、たくさん燃料を必要とする高回転、高負荷時には、12Vの電圧をかけるといったものである。
 そこで、フューエルポンプコントローラの各端子電圧を測定したところ、コントローラの入力信号は正しいのに、フューエルポンプヘの出力がされてないことがわかった。(図4
 フューエルポンプコントローラの不良である。
 新品の部品と交換すると、暖機後でも通常どおりに始動できるようになった。
《技術相談窓口》

実践!整備事例一覧表 > 整備事例