実践!整備事例一覧表 > 整備事例


 

平成15年12月
消えなくなったエアバッグ警告灯

 事故修理を終えて納車しようと思ったら、エアバッグ警告灯が消えないという、’99年式のグランド・ハイエース(GF-VCH10W、エンジン型式5VZ)のトラブル事例を紹介する。
 事故は右前部中破で、100万円強の修理代を要しているらしい。
 ダイアグノーシスの操作要領を電話で説明して、コード表示を調べてもらったところ、コード「14」(運転席エアバッグ回路断線)と「63」(運転席側シートベルト・プリテンショナ回路短絡)を表示するとのことであった。
 ステアリングホイールのホーンスイッチを押しても、ホーンが鳴らないという事実からも、コード「14」はスパイラル・ケーブル断線の疑いが濃厚である。
 ステアリング・リンクや、サスペンション関係の部品が交換されている事から、前輪の直進位置とスパイラル・ケーブルの中立位置を合わせないで組み付けたために、ハンドル操作をした時に断裂したにちがいない。
 スパイラル・ケーブルの正しい組み付け方を説明して交換してもらうと、コード「14」は表示しなくなり、ホーンも鳴るようになった。
 しかし、あいかわらずエアバッグ警告灯は点灯したままで、もう1つのコード「63」は消す事ができず、当会への依頼となった。
 ダイアグノーシス・コネクタ(OBD用)に専用診断器(DST-1プロ)を接続してダイアグノーシス画面にすると、図1のような表示がされた。

SRSエアバッグダイアグコード
  現在コード数:1 B0130 前席R側プリテンショナショート
  過去コード数:2 B0101
B0130
D席前突スクイブオープン
前席R側プリテンショナショート
図1 診断器に表示されたダイアグノーシスコード

 ここで重要なのは、『現在コード』と『過去コード』の見分け方である。
 前述してきたように、スパイラル・ケーブルを取り替えた事で、メーカーコード「14」に相当するSAEコード「B0101」は過去コードのみに表示され、メーカーコード「63」に相当するSAEコード「B0130」は過去コード及び現在コードの両方に表示されている。
 この事から、エアバッグ警告灯を消すためには、現在コードを表示している部分の不具合を取り除いてやらなければならない。
 運転席側シートベルト・プリテンショナは、文字どおりシートベルト巻き取り部分に設けられており、その一部に火薬を内蔵した、インフレータが装着されている。
 その点火回路に短絡が起きている訳だから、インフレータ自体か、センター・エアバッグセンサとを結ぶ、ワイヤハーネスで短絡していると考えられる。
 図2に示すように、プリテンショナ側でカプラを切り離してダイアグコードを調べると、メーカーコード「64」に相当するSAEコード「B0131」(運転席側シートベルト・プリテンショナ回路断線)の表示に変った。
 以上の事から、短絡はインフレータ内部で発生していると判断できる。
 シートベルトを新しい物と交換し、ダイアグメモリをクリアすると、エアバッグ警告灯は消えた。(図3)


図2 短絡部位を特定する方法


図3 インフレータ回路が短絡していたプリテンショナ付シートベルト

 メモリをクリアする方法は、診断器を用いるものと、ダイアグコネクタの端子を短絡しておこなうものとがある。
 後者の方法を図4に紹介するので、参考にしてもらいたい。
《技術相談窓口》

実践!整備事例一覧表 > 整備事例