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平成16年4月
作業ミスが原因のエンジン不調

 アイドリングがきわめて不安定で、常にアクセルペダルに足を乗せておかないと、エンストするという’96年式のパルサー(E-FN15、エンジン型式GA15DE、走行距離6万7千km)の不具合事例を紹介する。
 技術相談を持ち掛けてきた工場で、エアフローメータ(スロットル・チャンバーAssy)と水温センサを中古部品と取り替えている。
 外部診断器を接続して調べてみると、ダイアグコードは正常コードを表示しており、手がかりになるものはない。
 データモニタ画面にすると、空燃比補正値が120%近くになっており、かなり増量側に制御されている事が判った。
 フューエル・パイプラインのリターン側をカットするとエンジン回転が安定するので、まちがいなく空燃比が薄すぎて不調になっていると診断できる。
 燃圧計とエアフローメータの計測値からは空燃比が薄くなる要素は見あたらないので、それ以外の要因で薄くなっていると考えられる。
 そういえば、アイドリング時のエンジンの音が普通とは異なっており、「シュー」という音が耳につく。
 どこからかエアを吸っている疑いがあるので、LPガスを含んだブレーキクリーナを吹きかけてみると、スロットル・チャンバー近辺で大きな変化が見られた。
 前述のようにスロットル・チャンバーを交換しているので、ガスケットが破れている事も有り得る。
 スロットル・チャンバーを取り外してみると、ガスケットからではなく、図に示すAAC(オギジリアリ・エア・コントロール)バルブが浮いており、そこから大気を吸っていたのである。
 交換作業を担当したメカニックに聞いてみたところ、AACバルブをスロットル・チャンバーから外して、内部を洗浄した事が判明した。
 それを組み付ける際に、先端のOリングが正しく入っていないのに気付かないままビスを締め付けたため、Oリングが切れると共にそのすき間から、エアフローメータが検出できない空気を吸い込んで、空燃比が薄くなって不調になってしまった訳である。
 このように、元々の不具合を修理する過程で、新たな人為的不具合原因を作ってくれると、そのあと仕末をする者は大変苦労させられる。
 今回の場合の真の不具合原因は、フューエル・インジェクタの詰まり気味によるもので、それをエアフローメータや、水温センサを交換してみるという「場当り」的な作業をした上に、前述のような作業ミスで余計な原因を作ってしまったのである。
 トラブル・シューティングの基本は、「問診」と「診断」が8割であり、これが完全にできれば早期解決につながるが、そうでない場合はいたずらに時間と物を浪費するばかりである。《技術相談窓口》
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