平成16年7月
作られたトラブル
SRSエアバッグとABSの警告灯が点灯するという平成5年式BMW(車両型式E−CA18)のトラブル事例を紹介する。
まず、2つのランプが点灯するようになった経緯を聞くと、車検で入庫し、ドライブシャフトブーツの交換と、コンビネーションメータを外してから点灯するようになったという。
こういうふうに、何かの作業後に不具合が発生するようになった場合、ほとんどが作業ミスによることが多い。
コンビネーションメータを外す際に、バッテリのターミナルを外しておいたかと聞くと、外してないという。また、ドライブシャフトブーツを交換する際に、ABSのスピードセンサを外して作業したかと聞くと、外してないという。
ここまで聞くと、2つのランプが点灯するようになった原因は推定できる。
まず、SRSエアバッグシステムだが、警告灯はコンビネーションメータ内にあるのでメータを外すということは、SRSエアバッグシステムの警告灯の回路が断線したということになる。
また、SRSエアバッグシステムは、システムの性格上、イグニッション・スイッチOFFでも、数分間、電源が供給されている。
よって、電源が供給されている間に、コンビネーションメータを外すと、システムに異常があったと判断し、SRSエアバッグシステムの警告灯を点灯させる。(本当に、警告灯の回路に異常があり、継続している場合は点灯しない。)
こういった場合、そもそも故障箇所がなかったわけなので、異常コードの消去をしてやれば、警告灯は消えるはずである。
ダイアグノーシスのコードを確認し、消去作業を行うと警告灯は消えた。
もし、これでも点灯するようであれば、本当にどこかが故障していることになる。
ABSについては、ダイアグノーシスを点検すると、フロント右スピードセンサの異常を表示した。
抵抗を測定すると∞Ωだった。念のため左のスピードセンサの抵抗を測定すると、約1kΩだったので、右のセンサは不良ということになる。
外観上は切れてはないが、内部で断線しているようである。
この場合、ドライブシャフトブーツを交換したら、たまたま断線したというより、交換する際に、スピードセンサの配線に、無理な力がかかり、内部が断線したと考えるのが妥当である。
今回のトラブルは、故障というより、整備士が正しい作業をしなかったことにより、トラブルを作ったということになる。
SRSエアバッグシステムに関する部品の脱着をする時は、バッテリのターミナルを5分以上外してから作業にかかる。
足回りの部品を脱着する時は、スピードセンサの配線に無理な力がかからないようにする。もしくは、センサを外してから作業を行う。
こういった、基本的なことを知っておくことが、また、実践していくことが、トラブルを作らずにすむことにつながるのである。
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