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平成16年12月
吸入空気量信号の変化だけでは不充分なDジェトロの制御
 エンジン始動直後は良いが、1〜2分後には吹き上がらなくなるという、'96年式のローバー(E-XP14K2、エンジン型式14K2、走行距離6万km)のトラブル事例を紹介する。
 技術相談を依頼してきた工場で、ディストリビュータのキャップと、プラグコードを交換したが症状は変わらず、ECUも中古に取り換えてみても直らないとの事で、車が持ち込まれたきた。
 エンジンを始動してみると、アイドリングは比較的スムーズだが、アクセルペダルを踏み込むと、ストールしそうになる位まで回転が落ち込んで、アイドリングもラフになってしまう。
 シングルポイント式インジェクションシステムの、フューエルリターンホースを折り曲げてやると、吹き上がりが改善される事から空燃比が薄いのが不調の原因のようである。
 吸入空気量は、バキュームセンサによって検出する、Dジェトロニック方式であるが、バキュームセンサがECU内部に設けられているので、国産車のように信号電圧を測定する事は不可能である。
 ECUに接続されているホースに、バキュームゲージをセットして負圧を測ってみると、スロットル開度に応じて変化するので、問題ないと判断した。
 次にフューエルインジェクタの噴射時間をオシロスコープで観測してみると、アクセルペダルを踏んでもまったく噴射時間が伸びていない事が判った。
 普通に考えると、インテークマニホールド内の圧力が変化していれば、吸入空気量信号がそれを受けて噴射時間が変わるはずである。
 前述のようにECU内部にバキュームセンサがあるので、信号電圧を測る事はできないが、ECUを交換しても同じという事からして、信号は異常なしと考えるしかない。
 まだ測定していないそれ以外の信号を計測してみると、スロットルポジションセンサの信号電圧がまったく変化していない事に気がついた。
 電源とアース間に5V供給されている事から、センサ自体の故障と考えられる。
 スロットルチャンバから取り外したセンサを調べてみると、表1のような結果が得られた。
 スロットル開度の信号が正しく入力されないと、たとえ吸入空気量信号が変化しても、ECUは加速状態と判断しないため、噴射時間が伸びないのではないだろうか。
 とりあえずスロットルポジションセンサを交換してから様子をみる事にした。
 数日後届いた部品を測定してみると、抵抗値は比較にならない数値で、電圧もほぼ国産車と同じ位で変化するようになった。
 センサをスロットルチャンバに組み付けてエンジンを始動してみると、アイドリングも安定し、急加速してもストレスなく吹き上がるようになった。
 やっぱりスロットルポジションセンサの信号が入力されないと、噴射時間は変化しないようなプログラムになっているものと推測する。

表1.スロットル・ポジションセンサの測定結果

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