実践!整備事例一覧 > 整備事例  

Page 12
2006年2月
中途半端なショートがもたらす奇妙なトラブル
 ブロア・スイッチを「Mi」または「Hi」にしている時は良いが、「Lo」にするとヒューズが飛ぶことがあるという’02年式のミニカ(GD-H42V,エンジン型式3G83,走行距離3万km)のトラブル事例を紹介する。
 状況を詳しく聞いてみると、ヒューズが飛ばない時でもブロア・スイッチのポジションを、「Lo」にしている時しかエアコンが作動しないという。
 ショートが発生している回路を調べるには、図1に示すようにヒューズの代わりにテストランプを接続して、回路をONにしておいてワイヤハーネスをゆすってみた時に、ランプが明るく点灯した所に原因があるので、必要な処置をすればよい。
 この方法であれば、ヒューズをムダにしなくて済む。
 ヒーター&エアコンの回路は図2のようになっており、現時点ではブロア・モーターが正常に回っているが、前述のように「Mi」・「Hi」ではエアコンがONしない。
 エアコン・スイッチの信号電圧を測定してみると、「Lo」ポジションではバッテリ電圧を示すが、それ以外の場合は3V前後になってしまう。
 回路図を見ると、エアコン・スイッチの電源側端子はブロア・スイッチの「Lo」ポジションから分岐しており、「Mi」・「Hi」ポジションではレジスターを経由して供給するようになっている。
 エアコン・アンプ(エンジンECU)内の抵抗値はレジスターとは比較にならない位に大きいので、レジスターの抵抗は影響しない程度の電圧値になるはずである。
 ところが実際には3Vまでドロップしている。
 エアコン・スイッチがOFFでもスイッチ電源端子の電圧が3Vしかないことから、エアコン・アンプ(エンジンECU)の不良ではないと判断できる。
 そうなると、レジスターと分圧する回路が存在すると考えなければならない。
 ワイヤハーネスを触っていくと、電圧が変化する部分があった。
 助手席ダッシュサイドのインナートリムを取り付けるステーの角に、ハーネスがこすれて被覆が破れていたのである。(図3)
 その部分を浮かしてやると、エアコンは正常に作動するようになった。
 むき出しになったハーネスがステーに接触して、ヒューズが切れることを繰り返しているうちに、ショート部分が焼けて抵抗値を持った接触不良状態になっていたために、レジスターとの分圧回路を形成していたのである。
 なぜ「Lo」の時だけヒューズが飛んで、それ以外のポジションでは飛ばなかったかという理由は、「Lo」ではレジスターを通らず直接ショート回路に過大電流が流れるが、「Mi」・「Hi」の時はレジスターを通るために電流が制限されていたからである。
《技術相談窓口》
1 / 2

実践!整備事例一覧 > 整備事例
UP