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2006年9月
信号が欠落していないのに点灯するエンジン警告灯
 エンジンに不調は感じないが、エンジン警告灯が点灯するという'00年式のローレル(GF-GC35 エンジン型式RB25 走行距離13万km)のトラブル事例を紹介する。
  相談を持ちかけてきたメカニックの話によると、ダイアグノーシス・トラブル・コードは「21」を表示しており、一度メモリをクリアしたのちも警告灯が点灯し、再度調べても同じコードを表示したとの事であった。
  DTC(ダイアグノーシス・トラブル・コード)「21」は、点火信号系の異常を示すものであり、検出条件は「エンジン回転中、点火信号が連続して発生しない時。」と整備マニュアルに記されている。
  点火システムはダイレクト・イグニッション・システムで、各シリンダに設けられたイグニッション・コイル内部に、イグナイタが組み込まれているタイプである。
  点火信号の良否を調べるためには、ECUからイグナイタへ送られる信号を波形観測しなければならない。
  整備マニュアルに載っている正常波形を図1−(1)に示すが、DTC「21」を表示するという事は、6つのイグナイタの内のいずれかが正常ではないと考えられるので、早速オシロスコープをセットして調べてみた。
  その結果、1つだけ他とは異なる信号波形を表示するものがあった。
  図1−(2)のように、点火信号のピーク値が他よりも高くなっている。
  最初に説明したように、「エンジン不調は感じない…」との事だから、信号が発生していない訳ではない。
  もし信号が発生していないのであれば、1気筒点火ミスするので、不調を感じるはずである。
  メーカー発行の整備マニュアルに書いてある「エンジン回転中、点火信号が連続して発生していない時。」という検出条件は、きわめて当たり前の事であって、具体的には信号波形の電圧値等に細かな検出レベルが設定されており、その範囲を外れた場合にも、エンジン警告灯を点灯させるものと推測する。
  ECUとイグナイタ&コイルの関係は、図2のようになっているものと思われるので、信号波形のピーク値が高いという事は、パワートランジスタのコレクターからベースへのリークか、エミッター〜グランド間の抵抗増大によるものと考える。
  いずれにせよ、イグナイタ&コイルが一体になった物をセットで交換しなければならないが、この頃のRB系エンジンのイグナイタ&コイルは不具合が多く、仮に現在悪い気筒の物だけを交換しても、今後同じような事が発生する可能性が高いので、6個すべてを新品に交換する事を勧めておいた。

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