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2007年3月
ステアリング・ホイールの直進位置が変化する
 ホイールアライメントの測定・調整依頼で当会に入庫したセリカ(型式E−ST185H、エンジン型式3S、走行15万3千氏jのトラブル事例を紹介する。
  話を聞いてみると「ステアリング・ホイールを右に切った後に直進状態に戻しても、ステアリング・ホイールが真っ直ぐになっていない」という。しかし、ステアリング・ホイールを左に切った場合は全く問題がないらしい。
  ホイールアライメントとは関係がなさそうに思えたため「ホイールアライメントとは関係のない可能性が高いですよ」と話したのだが、それでもいいから測定してほしいとの事であった。
  実際に試運転を行ってみると確かにその症状が発生する。ステアリング・ホイールの取り付け部や、ステアリング・ホイール〜ギヤボックス間のフックジョイントに問題がないか調べてみたが、どうも違うようだ。
  では、ナックルアームとタイロットエンド取り付け部のガタか?とも考えたのだが、これも特に問題がない。
  ギヤボックス自体に問題が発生しているのだろうかと思い、しばらく車両の下に潜り込み、ステアリング・ホイールを動かしているときの各部の動きをチェックしていると、何かがおかしい。
  さらに注意深く観察を行っていると、なんとステアリング・ホイールを右に切ったときだけ、ギヤボックス自体が移動しているではないか。
  ギヤボックスが動かないように固定するブラケットがあるのだが、ギヤボックスとブラケットの間に挟まれている固定、衝撃吸収用のグロメット(図1参照)が、経年劣化で用をなさなくなっていたのである。
  ステアリング・ホイールを左に切った場合は、ギヤボックスは左には一定の位置以上動かないので問題がないようである。
  右に切ったときは限界まで右方向に動いているようであった。このため、ステアリング・ホイールを右に切るたびに本来の車両直進状態のギヤボックスの位置が移動するので、その後ステアリング・ホイールを直進位置に戻してもギヤボックスの位置が本来の位置と異なり、今回のような不具合を発生させていたのである。
  もちろん、今回の不具合はホイールアライメントとは関係なく、ギヤボックスを正規の位置にした後、ホイールアライメントを測定したところ、データ上では全く問題はなかった。
  そもそも、ホイールアライメントが関係してくる不具合としては、(1)タイヤが偏磨耗する(2)車両が左もしくは右に流れる(ワイドで偏平率の低いタイヤはハンドルが左右両方にとられる現象を引き起こしやすいが、これはタイヤの問題である可能性が高いので注意)の2つが主である。
  トラブルを早期解決するためには、エンジントラブル、シャシトラブルを問わず、切り分けが非常に重要なのである。
《技術相談窓口》
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