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2007年8月
新しい技術の習得も大事 |
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自動車の技術は年々進歩しているが、車を修理する整備士がそういった新しいシステムを知らないと思いがけない事態に遭遇することがある。また、修理する中で逆にトラブルと勘違いするようなことが出てくるので注意が必要である。
今回はそういった、新しいシステムに関する事例を紹介する。
【事例1】
平成14年式ライフ(車両型式LA−JB1、エンジン型式E07Z)
冷機時、Rレンジにシフトするとエンストすることがあるというトラブル車。
アイドリングでエンジンの振れが大きいようなので、パワーバランステストを行ってみることにした。
1番シリンダのIGコネクタを抜くと、エンジンの振れは大きくなり、アイドル回転は落ち込んだ。1番シリンダはミスしてはいないようだった。
次に、2番シリンダを点検しようと1番シリンダのコネクタを元に戻したが、1番シリンダのコネクタを抜いた時と同じ状態のエンジンの振れである。
不具合症状が出たのかと思い、火花とインジェクタの作動音を確認すると、火花は飛んでいたがインジェクタは作動していなかった。インジェクタ系の点検をしようと思ったがなんかおかしい。あまりにもタイミングがよすぎる。
一旦エンジンを止め、始動させると先ほどのようなミスは感じられなかった。
再度IGコイルのコネクタを抜き、元に戻すとミスは続いたままとなった。
ダイアグノーシスを調べると「点火システム1次側故障」と表示した。
どうも点火1次側に故障が発生すると、フェイルセーフにより、インジェクタを停めているようだ。
これは、排気温警告灯の義務付け廃止により、失火による触媒加熱を防ぐためのシステムのようである。(最近では、失火の気筒がコードでわかるようになっている)
全てのエンジンに採用されているわけではないが、このようなフェイルセーフを備えているエンジンでは、点火1次系に不具合があり、整備工場に来る間によくなった場合、インジェクタが作動していない状態なので、誤診につながることもあるのでご注意を。
エンストの原因は、O2センサーの不良とバルブクリアランス過小によるものだった。
【事例2】
平成14年式ゴルフ(車両型式GF−6XAUA,エンジン型式AUA)
エンジン始動後、30秒くらいするとエンジンの振れが大きくなり吹き上がりが悪いというトラブル車。
パワーバランステストを行うと、2番シリンダが失火しており、調べるとインジェクタの作動音がしなかった。
インジェクタの噴射波形を調べると、始動直後は正常な波形だが、30秒くらいすると12V一定となった。
ECUの不良だろうと思い、デーラーの人に確認したところ、失火モニターがあり点火系だけではなく、圧縮不良でもインジェクタを停めるということだった。
結局、原因は圧縮不良であった。
事例1のライフは点火1次側にトラブルがあった時だけインジェクタを停めていたが、ゴルフは更に進化したシステムであり、どこに原因があろうとも、とにかく失火があればその気筒のインジェクタを止めてしまうのである。
【事例3】
平成13年式マークII(車両型式JZX110)
フューエルポンプを交換する作業があったのだが、ほぼ満タン状態だったので約20リットルのガソリンを抜いてから作業をしたらしい。
作業が終わったのでエンジンをかけたのだが、燃料計の表示は満タンのF位置を表示したままだという電話相談。
詳しく話を聞くと、エンジンをかけ直したり、フューエルセンディングユニットのコネクタを抜いても変化しないという。
センディングユニットのコネクタを抜いても変化しないとなると、配線がショートしている可能性もあるが、作業でそんなことになる可能性はないという。
まずシステムがどうなっているかを調べてみると、通常、燃料計はセンディングユニットのフロート位置により燃料の表示をしているが、この車は増えた分の量はセンディングユニットで検出しているようだが、使った分はフューエルインジェクタから噴射された量をエンジンのECUが計算をして減算表示をしていることが判明した。
そもそもこの機能は、坂道や旋回時に燃料計の変動を抑えるためのものであり、急激なセンディングユニット信号の変化に対して、燃料計の指示を変えないようにしているのである。
したがってこの相談内容はトラブルではなく、燃料を元に戻してやることでなんら問題ないことになる
以上のように、ECUがアクチュエータを強制的に停止させている場合は、原因は他にあるのにもかかわらず、実際に作動していないアクチュエータを不良と判断したり、トラブルではないこともトラブルと思ったりしてしまうので、新しいシステムについての勉強は必要である。
《技術相談窓口》