2008年10月
限られた条件で発生するエンジントラブル |
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クランキングしてもエンジンが掛からなくなる事があるという、’99年式のサンバー・クラシック(GF-TW1 エンジン型式ENO7、走行距離10万km)のトラブル事例を紹介する。
不具合発生時の状況を詳しく尋ねてみると、エンジンが冷えている時は問題なく始動できるが、暖機後にエンジンを停めて、10分後位に始動する時に不具合が発生する事がわかった。
ダイアグノーシス・コードを点検してみたが、残念ながら異常コードは検出されていなかった。
不具合が発生する時の条件を作って、再現した時に点検ができるように測定機器類をセットして備えた。
クランキングすると、点火火花が飛ばずフューエル・インジェクタの作動音もなかった。
両方共作動しない事から、エンジン回転信号がECUに入力されていない可能性が高い。
カムプーリの外周部に取り付けられているクランク角センサの信号端子にオシロスコープを接続して調べたところ、信号が途切れている事が判明した。(図1)
しばらくそのまま放置して、エンジンの熱をさましてからクランキングすると、一発で始動できた。
エンジン回転中にセンサを取り付けている部分を軽く叩いてみると、図2のように信号にノイズが現われた。
以上の点検結果から、クランク角センサが高温になった時に、エンジン回転信号が欠落する事によって始動不能になったものと判断される。
エンジンルーム内の温度は、エンジン回転中よりもエンジン停止後の方が高くなるのが一般的で、過去にも同じように熱によってセンサやアクチェータが誤動作した事例を経験している。
外部診断器を用いて、吸気温センサの温度変化を時間の変化と共に調べたものを図3に示す。
これによると、エンジンを停止してから15分前後が最高温度に達している事がわかり、コンビニ等に立ち寄った直後に、エンジンの掛かりが悪いといった事を訴えてくる場合は、この事を参考に問診してもらいたい。
ところで、今回の不具合原因であるクランク角センサの信号異常が、なぜダイアグノーシスに検出されていなかったかが気になるところであるが、この頃のスバルの軽自動車の場合、クランク角センサは検出項目に入っていないのである。
いちばん重要な信号なのでぜひとも入れてほしいところであるが、メーカーの設計陣は絶対に壊れないと思っていたのかもしれない。
三菱電機製のセンサを交換して、不具合は解消した。
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