2009年1月
タイミング・チェーンも10万kmで交換が必要!? |
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エンジン不調は感じないが、エンジン警告灯が点灯するという、’02年式の日産キューブ(UA-BZ11、エンジン型式CR14、走行距離10万km)のトラブル事例を紹介する。
外部診断器を接続してDTC(ダイアグ・トラブル・コード)を調べてみると、2つの異常コードが表示された。
1つは「P0340」(PHASE信号系統異常)で、もう1つは「P1110」(VTCバルブ制御信号系統異常)である。
CR14型エンジンは1.4lDOHCでインテーク・カムシャフトがクランクシャフトに対して位相を変えられるようになった、可変バルブタイミング機構が組み込まれている。
したがって、それぞれのシャフトに回転速度と角度を検出するためのセンサが取り付けられており、両者の信号の位相をみながらECUがアクチェータを制御する仕組みである。
さっそく2つのセンサの信号をオシロスコープで波形観測してみると、
図1のような結果が得られ、それをメーカー発行の整備マニュアルと比較したところ、微妙な差異がみられた。
クランクシャフトで検出するPOS信号(クランク角信号)に対して、カムシャフトで検出するPHASE信号(カム角信号)が遅れている事が図から読み取れる。
可変バルブタイミング機構の『目標角度と実際の角度の差が、ある値以上になると異常を検出する。』という事が整備マニュアルに記されており、前述の信号の差異がその条件に合致したものと考える。
それぞれのセンサの取付位置が動くような構造ではない事から考えると、クランクシャフトとカムシャフトの間に位相ズレが発生しているとしか思えない。
シリンダ・ヘッドのカバーを取り外して調べたところ、タイミング・チェーンのたるみが確認できた。
ラチェット式のチェーン・テンショナが出っ張った状態であるにもかかわらず、チェーンは
ゆるゆるになっている。
これが前に述べた2つの信号の位相ズレの原因である。
ECUはこの信号を基にして、バルブタイミングを制御する訳であるが、その基となる信号が制御する前からズレているために、DTC「P1110」の検出条件にあてはまる事で、チェック・エンジン・ランプを点灯させたのである。
タイミング・チェーンが伸びたり、テンショナやガイドが磨耗する事はあたり前なので、ある程度の機械的な位相ズレは起こりうる訳であり、その事を理解できていない電子制御部分を設計する部門とのギャップがもたらしたトラブルと推測する。
もう少しヒステリシスを考慮したプログラムにしてもらいたいものである。
タイミング・チェーンが伸びた事で、異音を発したりエンジン不調があるならともかく、ただ「チェック・エンジン・ランプが点灯する」という現象なのに、エンジンを脱着して10万円強の修理費用を要するのは、いかがなものだろうか。
今回の修理で交換した部品を
図2に示すので、参考にしていただきたい。
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