オートマチック・トランスミッション車で、前進も後退もできなくなるという、平成12年式ホンダセイバー(車両型式GF-UA5、原動機型式J32A)のトラブル事例を紹介する。
状況を確認してみると、始めはスムーズに発進するのだが、変速する瞬間に急に動力が伝わらなくなり、エンジンが吹け上がってしまう。
その後は前進も後退もできないが、一旦エンジンを切ると、再び走行できるが、しばらくすると同じ症状に陥るというもの。
オートマチック・トランスミッションの不良とは思うのだが、ダイアグノーシスコードは異常コードを検出しないため、どこに原因があるのだろうかという問い合わせであった。
実はこの車、オイルラインの途中にフィルターを設けており、このフィルターが詰まることによりライン圧が低下し、動力が伝達できなくなる。
フィルターの場所は、クラッチ・プレッシャ・ソレノイド・バルブの奥に取付けられており、バルブを取り外すと、フィルターを確認することができる。(資料1参照)
このフィルターを調べたところ、やはり目詰まりしていた。
清掃後の試運転で不具合は改善されていたが、しばらくすると再び不具合が発生し、再度フィルターを調べると、また詰まっていた。
これを何度か繰り返した後は不具合も発生しなくなった。
症状が軽い場合はこのフィルターを清掃すれば良くなることもあるが、場合によっては清掃しても、完全には良くならないこともあるので、その場合にはミッションの交換が必要になる。
これまでに同じ症状の相談を数台受けており、原因は全て共通であったので、今後も同様の不具合が発生すると思われる。
同じ症状のホンダ車が入庫したときには、「前進も後退もしないのでトランスミッションを交換」する前に、一度清掃してみてはどうだろうか?
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