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2009年11月
ショートによる他への影響 パート2

 本誌2007年2月号にて「ショートによる他への影響」として、スズキワゴンRのISCVがショートしたという事例を紹介したが、ショートによる影響がECUに及んだという別の事例を紹介する。
  アイドリングが効かなくなったという、平成10年式(車両型式GB‐RZU100H、原動機型式3RZ-FP)トヨタダイナ(LPG)のトラブル事例。
  状況を確認してみると、アクセルを踏んでいるときや、エアコンをONさせているときにはアイドリングは効くのだが、それ以外ではエンジンが停止してしまう。
  スロー・ロック・ソレノイド(スロー・カット・ソレノイドと同じもの)の上流、下流ともに12Vでており、下流側をグランドさせるとアイドリングが効くとのこと。
  当会に入庫したときには、エアコンのアイドルアップを無理やり効かせてアイドリングを保たせていた。
  スロー・ロック・ソレノイドの制御は、ソレノイドのグランド側をECUで制御するという方式であったので、まずはECU側で電圧を調べたところ、12Vであった。
  このことから、スロー・ロック・ソレノイド〜ECUまでの配線に断線はないことが確認できると同時に、ECUが何らかの原因でスロー・ロック・ソレノイドのグランド回路を遮断しているということになる。
  そこで、スロー・ロック・ソレノイドの単体点検をおこなったところ、通常20〜25Ωあるはずの抵抗がわずか5Ωしかなかった。
  ECUで制御する回路がショート気味になるとECU内部の回路に影響をおよぼすため、ECU内部を調べたところ、スロー・ロック・ソレノイドバルブのグランドを制御するトランジスタがパンクし、ひびが入っていた。
  このため、スロー系統の燃料を供給することができずにアイドルを保てなくなっていた。
  ECUとスロー・ロック・ソレノイドをセットで交換して完治したのだが、今回の事例や先に紹介したワゴンRの事例もそうであるように、ECUで制御する回路がショートしてしまうと、回路上の部品の交換では完治しない。
  回路上の部品を交換するだけの処置をおこなってしまうと、場合によっては交換した部品が過電流により、すぐに悪くなってしまうこともある。
  では、全ての回路においてショートしたときにはECUが悪くなるのかと言われると、そうではない。
  例えばセンサー等に使われている5Vの安定化電源回路であれば、ショートしても保護回路があるためにECUが壊れることはまずない。
  ECUの点検が必要となるケースは、12V電源の回路をECUが制御している場合である。
  ショートしたときの対処方法は断線したときの対処方法に比べ単純にはいかない。
  近年の自動車ではほとんどの回路がECUで制御されているので気をつける必要がある。


※過電流により、トランジスタがショートする場合もある。
この時は、常時回路がONの状態となる。この状態でソレノイドのもを交換すると、ソレノイドを過電流で壊してしまう恐れがあるため、注意が必要!
 
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