時々エンジンが始動できなくなるという、平成17年式(車両型式LA-SE3P、原動機型式13B)マツダRX-8のトラブル事例を紹介する。
状況を詳しく尋ねてみると、朝一や、2・3日エンジンを掛けずに放置していると不具合が発生することが多いらしい。
そのまましばらく放置していれば、またエンジンが掛かるようになるが、不便で仕方がないというもの。
プラグは新品に交換され、点火火花も良好だが、不具合が発生した直後にプラグを確認すると、プラグがびっしょり濡れている。
ロータリーエンジンなので、圧縮不良か?とも考えたが、走行距離が約7万キロでオイルメンテナンスも良い(1オーナー)し、一度エンジンが掛かるとその後は調子良く走るため、圧縮不良の線は薄いと思われた。
だだし、女性オーナーのため、エンジン回転を上げて走行することはほとんどないとのこと。
点火火花もよく、プラグも新品。プラグがびっしょり濡れることから燃料の噴射もOK。圧縮も悪くないとすれば残る原因がなくなってしまう。
これは何かあるはずだと思い調べてみたところ、RX-8には「ディチョーク」という作業があることが判明した。
ロータリーエンジンのプラグは、構造上、ローターハウジングの窪んだところに配置されている。
これは、レシプロエンジンのように作動室にプラグが飛び出ていると、回転するローターとプラグが干渉し、プラグが破損してしまうからである。
しかし、このプラグの配置がエンジン始動不能の原因になることがある。
ロータリーエンジンのローターには、ご存知のようにアペックスシールがあり、このシールで気密を保っている。
作動室を形成する重要な部品の一つだが、エンジンの始動に失敗した場合、燃焼できなかった燃料は、このアペックスシールによりかき出され、プラグ穴に溜まってしまう。
このときにプラグはびっしょりと濡れてしまい、完全にかぶってしまう。
こうなってしまうと再度クランキングをしても点火できず、エンジンが掛からないから再度クランキングし、プラグがびっしょり濡れる…という悪循環に陥ってしまう。
実はこういった状況も想定されているのか、先に述べた「ディチョーク」という作業が存在する。
ディチョーク制御とは、スロットル・バルブ開度が50゜以上の状態でクランキングをすると、燃料カットしたままクランキングが行われ、作動室内の掃気を行うことができるというものである。
エンジンの始動に失敗しプラグがかぶってしまった場合にディチョークを行えば、作動室内が掃気されプラグが乾くため、再度エンジンの始動を試みることが可能になるのである。
ディチョーク時のクランキング時間は約15秒で良いとのことなので、まずはディチョークを行ってみるよう連絡した。
後日先方から、ディチョークを何度か繰り返した後、エンジンは正常にかかるようになったとの連絡があった。
RX-8は走行距離を問わずこのような症状になることが多いようなので、同じような問い合わせがあった場合には、一度試してみてはどうだろうか? |