車は平成13年式ヴィッツ(車両型式TANCP15、エンジン型式2NZ)で、アイドル回転が低く、時々エンストすることがあるというトラブル事例。
エンスト後の再始動は問題なく、また、アイドル回転は低いがラフアイドルではないという。
こういったトラブルの場合、アイドル回転制御系に原因があることが多い。
現在の車はエンジンのECU でアイドル回転を制御しているが、アイドル回転制御を行うアクチュエータ(通常、ISCV と呼ばれている)は3つのタイプに分けられる。
3つのタイプは配線の数によって見分けることができる。
古い車には、2本線タイプのリニアソレノイド式と呼ばれるISCV が付いているが、ほどんど見かけなくなった。
最近では3本線のロータリー・ソレノイド式、6本線のステップ・モーター式のISCVがほとんどである。
6本線のステップ・モーター式は単体点検ができるが、3本線のロータリー・ソレノイド式は単体ができない。(一部古いのは可能)
また、ステップ・モーター式は弊誌2007年2月号にも事例紹介しているが、内部のコイル断線が多いが単体点検で良否の判断が可能である。
3本線のロータリー・ソレノイド式は、内部の電気的トラブルはあまりないが、機械的なトラブル(固着や動き不良)が多い。
このヴィッツには3本線のロータリー・ソレノイド式ISCV が付いていた。
アイドリング状態でISCV のコネクタを抜いてみたが回転に変化がなかった。
通常、このタイプのISCV は、コネクタを抜くと1200〜1300回転に上がるはずである。
全く変化していないということは内部で固着しているということになる。
ISCV の取付けボルトを外すと、ロータ部が見えた。(写真1)
この部分をゆっくり手で回すと「ガリッ」という感触とともに抵抗を感じながら回った。やはり固着していたようである。
スロットルバルブの手前にあるISCV のエアの吸入口(写真2)にキャブクリーナーを入れ、ロータ部が引っかかりも無く軽く回るように何度も回した。
また、スロットルバルブ廻りも清掃しておいた。
ISCV を付けてエンジンをかけると、正規のアイドル回転になり、エンストは発生しなくなった。
ただし、この清掃を行うときに注意する点がある。ロータ部には1箇所ツメが出ているのだが、このツメをISCV の凹部に合わせて組まないといけない。合わせたつもりでも、ISCV を組むときに磁力によりロータ部が回転するので注意が必要である。(写真3)
このツメの位置が合っていないと、ISCVを付けたときにアルミの本体とに隙間ができる。
このようにISCV が単体で外せれば簡単に良くなるのだが、ISCV の取付けボルトに特殊なボルト(トルクスに似ているが6本足ではなく5本足)を使っている車がある。
対応する工具を持っていれば問題ないが、持っていない場合は次の要領で点検・清掃が必要である。
スロットルボデー下のアルミ製のISCV 本体を外し、バイパスエアの流量を換えるロータリーバルブ部(写真4)を細いもので軽く動かしてみる。抵抗があったり引っ掛かりがあった場合は、ロータリーバルブ部をキャブクリーナー等で清掃を行う。
3本線のロータリー・ソレノイド式で、アイドル回転が低い、アイドルアップしない、時々エンストする(再始動は良好)というトラブルの場合は、この清掃で良くなることが多い。
※写真は現車の物とは違います |