エンジンは始動できるが、すぐにエンストする平成6年式クラウン(車両型式E-JZS147、エンジン型式2JZ-GE)のトラブル事例を紹介する。
症状を確認すると、エンジン始動後2〜3秒すると徐々にエンジン回転が下がりエンストする。再始動はすぐにできるが、また数秒後にエンストする。それの繰り返しである。
ISCV が正しく働いていないのかもしれないと思い、始動後すぐにアクセルペタルを踏んでみた。ISCV が働いていないのであれば、回転を上げた状態ではエンストしないはずである。
しかし、回転は上がるがやはりエンストする。ISCV の問題ではなかった。
エンストの状況から、燃圧不足も疑われたので、始動時、パーツクリーナーを吸わせてみた。
すると、エンストは発生せず、アイドリングを保つことが出来た。
パーツクリーナーの吹き込みを止めると、アイドル不調になりエンストした。
このことから燃料が足りないのが原因に間違いなかった。
最も怪しいのは燃料ポンプだが、エンジンが始動できることから圧力不足よりも、ポンプの制御回路に原因があると思われた。
通常、燃料ポンプの制御はリレーで行っているのだが、トヨタのダイアグノーシスコネクタには、燃料ポンプを直結できる便利な端子がある。(図1、図2)
エンジンルーム内にあるトヨタ専用のダイアグノーシスコネクタの+B 端子とFp(フューエルポンプ)端子を直結してみると、エンストは発生しなくなった。
やはり制御系に原因があった。
ただし、この端子はトヨタ専用のダイアグノーシスコネクタにしかなく、OBDUコネクタ(台形の16P)には無い。
燃料ポンプの制御系というと、通常はサーキットオープニングリレーだが、このエンジンにはこのリレーとは別に、燃圧をコントロールするフューエルポンプコントローラというものが付いている。(図3)
これは、エンジン状態(燃料の噴射時間、エンジン回転)により、フューエルポンプ端子電圧を切り替える物である。
簡単にいえば、燃料をあまり必要としない低回転、低負荷時は、フューエルポンプ端子に8V 前後の電圧しかかけずにポンプの負荷を減らして作動音を小さくしている。
また、たくさん燃料を必要とする始動時や高回転、高負荷時には、12V の電圧をかけるといったものである。
調べると、エンジン始動後、フューエルポンプコントローラから燃料ポンプに出力されていないことが分かった。(基準値は図4)
フューエルポンプコントローラの不良である。
このシステムを覚えておけば、症状からすぐに不具合箇所を推定することができる。
燃料ポンプにも可変機構があることを知っておいていただきたい。
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