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2011年4月
排気ガステスタの活用方法パート I
(汎用診断機に頼りすぎは禁物)

エンジンの振れが大きいという平成16年式ランドローバー(車両型式GH-LN25、エンジン型式25K)のトラブル事例を紹介する。

依頼者の工場では汎用診断機を持っていたが、この車には対応していないらしく、ダイアグノーシスの点検やECU のデータモニタができないという。

症状を確認すると、特定のシリンダが常にミスしている感じがした。

排気ガステスタで排気ガスを測定すると、COは問題なかったがHCがかなり出ていた。

COに問題が無くHCが多いということは、空燃比が薄すぎによる失火、もしくは燃料は出ているが点火系の不良等により失火して未燃焼ガスが出ているということになる。

特定のシリンダのミスという現象と合わせて考えると、原因は点火系の可能性が高くなる。

チェックエンジンランプは点灯していなかったが、念のため、当会所有の汎用診断機でダイアグノーシスを調べると、コードP0302(2番シリンダ失火)を表示した。

やはり、失火によるエンジンの振れのようである。

ちなみに、この失火検出は、ある条件下で一定時間継続しないと異常検出しないので、失火しているからといって、すぐにチェックエンジンランプが点灯するものではない。

確認のために、パワーバランステストを行ってみると、確かに2番シリンダがミスしていた。

2番シリンダと1番シリンダのダイレクトイグニッションコイルを入れ替えると、今度は1番シリンダがミスするようになった。

このことからイグニッションコイルの不良と判明。

新品のイグニッションコイルに交換すると、不具合は解消された。

今回は、汎用診断機も使えたので、2番シリンダの失火と推定できたが、不具合現象と排気ガスの状態からでも特定のシリンダのミスと推定はできた。

後はパワーバランステストでどのシリンダのミスかも特定できる。

汎用診断機があれば、確かに効率よい診断ができ大変便利であるが、診断機に頼り過ぎてはいけない。

また、排気ガステスタは、車検の時だけに使うものではなく、エンジンの燃焼状態も判断できる、汎用診断機に劣らない便利なテスタなので活用していただきたい。

参考までに、排気ガステスタで測定できるCO、HCの一般的な考えは次のとおりである。

COは不完全燃焼ガスであり、酸素不足または燃料過多の場合に発生する。

つまり、空燃比に比例して多くなる。(濃いほど増える)HCは未燃焼ガス(=燃えなかったガソリン)であり、失火するほど増える。

失火は点火ミスだけとは限らず、空燃比の濃すぎや薄すぎでも発生する。このCO、HCと不具合現象を合わせて考えれば、おおよその不具合系統の絞込みができる。

特定のシリンダのミスで、COは問題なくHCだけが多い場合は、点火系、またはエンジン本体(圧縮やバルブクリアランス)が疑われる。

全体的なミスで、COは問題なくHCだけが多い場合は、空燃比の薄すぎが考えられる。

同じく全体的なミスで、COとHCがかなり多い場合は、空燃比の濃すぎが考えられる。

これがCOとHCが共に若干高い場合は、バルブタイミングのズレ、複数のバルブクリアランスの過少、燃料の不良、アイドリングでのEGR 作動などが考えられる。

ただし、これらは一般的な考えであって、必ずしもこうなるとは限らないのでご注意を。

《技術相談窓口》


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