車には様々なシステムが搭載されているが、それらの取扱いや構造を知らないと、トラブルではないのにトラブルと勘違いすることがある。
今回はそういったトラブルではないトラブル相談事例を紹介する。
《事例1》
リヤゲートの鈑金修理後に、キーレスエントリ作動時のアンサーバック機能(作動確認のためにウィンカーやルームランプが点滅する機能)が作動しなくなった平成19年式ハイゼット(車両型式S320V)
ドアロックやアンロックは正しく作動するということなので、トランスミッタ(送信機)やユニット(受信機)は問題ないと思われた。
鈑金修理後ということなので、バッテリを外したかと聞くと、たぶん外していたのではないかという返事。
アンサーバック機能はカスタマイズで設定変更が可能なので、カスタマイズ機能がないかを調べたが見つからなかった。
システムを解説書で調べると、アトレー系のアンサーバックはウィンカーとルームランプが点滅するが、カーゴ系はルームランプのみの点滅になっていた。
ただし、このアンサーバック機能は、ルームランプおよびラゲージルームランプスイッチがドアスイッチ連動の位置になっていることが条件である。
リヤゲートの鈑金修理後にルームランプ及びラゲージルームランプのアンサーバックによる点滅がしなくなったということなのでルームランプ及びラゲージルームランプのスイッチ位置を調べてもらうと、OFF 位置になっていた。
DOOR 位置にすると、アンサーバック機能が働くようになった。
《事例2》
SRS エアバッグ警告灯が点灯し、調べるとスパイラルケーブルが断線していた平成14年式ラパン(車両型式UA-HE21S)スパイラルケーブルを新品に交換したのだ
が、念のため導通を調べるとコネクタの両端で導通があるのはわかるが、同じコネクタの隣同士の端子でも導通があるので異常ではないかという問い合わせ。
エアバッグシステムのコネククには、図にあるようにスパイラルケーブルのコネクタやインフレータのコネクタ内にはショート・バーと呼ばれるものがあり、これらはコネクタを抜くと、端子同士がショート・バーによりショートする構造になっている。
これは、静電気による誤爆を防ぐもので、最近ではどのメーカーでも採用している構造である。
また、コネクタを接続すると、メス端子側のコネクタ内にある樹脂製のストッパーによりショート・バーと端子は離れ、端子同士のショートはなくなる構造になっている。
よって、ショート・バーが作動している状態で、隣同士の端子に導通があるのは正常である。
隣同士の端子の点検の必要性はほとんどないが、もし点検しようと思えば、そのショート機構を解除してから行う必要がある。
《事例3》
車検で入庫したキャンター(車両型式PAFD70BB)の電気回りを点検すると、コーナーリングランプが点灯しないというトラブル相談。
相談者が配線図を取り寄せ調べた結果、ユニットの電源、アース、ターンシグナルスイッチ信号は正常なのに、コーナーリングランプ出力信号が出力されていないのでユニットの不良と判断したのだが、本当にユニットの不良かという相談。
配線図を持ってきていたので見せてもらうと、ユニットにはテールランプリレーとパーキングブレーキリレーにも配線がつながっていた。
コーナーリングランプはスモールを点灯させている時だけ作動させるシステムなので、テールランプリレーの信号が必要なのがわかるが、パーキングブレーキリレーはわからない。
もしかして、パーキングブレーキを作動させているときはコーナーリングランプが作動しないのではないかと思い、それぞれの信号を調べてもらうよう説明しておいた。
しばらくして電話があり、パーキングブレーキを解除したらコーナーリングランプが点灯したとのことである。
一般的に、乗用車ではサイドブレーキのON/OFF に関係なくコーナーリングランプが点灯するが、大型車ではサイドブレーキを解除しているときにしかコーナーリングランプが点灯しない車両が多いようだ。
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