エアコンの風は出るが、冷えないという平成11年式の日産AD バン(KJ-VEY11、エンジン型式YD22)のトラブル事例を紹介する。
例年この時期に多くの問い合わせが寄せられる内容なので、今後工場に同様の故障車が入庫した際の参考にしてもらいたい。
現時点での様子を尋ねてみると、エアコン・インジケータ・ランプは点灯しており、コンデンサ及びラジエーターの冷却ファンも回っているものの、コンプレッサーのマグネット・クラッチに通電されていないとのこと。
この車に限らず、電動ファンでコンデンサ等を冷却する方式の場合のほとんどは、マグネット・クラッチの作動と連動している。
したがって、電動ファンが作動しているという事は、冷房モードの条件は成立していると考えてよい。
条件検出は、スイッチやセンサでおこなわれており、この車の場合は冷媒圧力とエバポレータ温度および、エアコンならびにブロワスイッチの4つが全てON して、図に示す〔A〕部の電位が0V 近くになると、条件成立と判断してエンジンECU が電動ファンリレーとA/C リレーをON する仕組みである。
今回の場合も、条件は満たしているのだが、片方のアクチュエータ(マグネット・クラッチ)だけが作動していないと推測される。
アイドリング状態でA/C リレーの作動音を確認してみるが、まったくその音が聞こえない。
リレーを外してコイルの導通点検をおこなってみると、ほぼ断線に近いメガΩ の値を示した。
新品のリレーと交換すると、マグネット・クラッチがON してコンプレッサーの作動とともに、冷風が出るようになった。
マグネット・クラッチをコントロールするリレーは、他の回路の、リレーに比べて、頻繁にON/OFF を繰り返すため、スパークによる電気接点の焼損や、コイルの断線が起きやすい。
参考までに述べさせてもらうと、電動ファンも作動しない場合は、前述した条件のいずれかが成立していないと考えれば良い訳である。
ここで注意してもらいたいのは、圧力スイッチは回路を直結してみれば良いのだが、最近は圧力センサを用いているものが増えているので、直結しても条件を満たさないばかりか、場合によってはセンサを壊す恐れがあるので、信号電圧を測定して良否の判断をしなければならない。
他にも、エンジンの冷却水温度が高過ぎる場合は、マグネット・クラッチをOFF するようにプログラミングされているものもあるので、注意してもらいたい。
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