走行していると、突然エンジンの出力が低下して、振動も大きくなるという平成14年式のハイゼット・トラック(TE-S200P、エンジン型式EF-SE、走行距離7万q)のトラブル事例を紹介する。
不具合発生の頻度は低く、2〜3日に一度くらいしか再現しないらしく、頼みの綱のダイアグノーシスにも手掛かりになる物はなかった。
持久戦を覚悟して基本的な部分から調べることにした。
点火プラグとコイルは既に交換したらしく、それ以外の系統に問題が潜んでいるものと考えられる。
いつ不具合が発生してもよいように、燃圧計やスキャンツール等をセットして試運転をおこなっていると、ようやく不具合現象があらわれた。
エンストこそしないが、振動が大きくてあきらかに1気筒死んでいる様子である。
パワーバランス・テストの結果から、第1気筒が機能していないことが確認できたので、点火系によるものか、燃料系なのかを絞りこむ作業をおこなってみると、フューエル・インジェクターの作動音が聞こえない。
オシロスコープで波形を観測したものを図1に示すが、正常な物と比べるとコイルヘの通電を遮断したときに発生する、サージ電圧(逆起電力)が発生していなかった。
コイルの導通テストをしてみると、50kΩに達していた。
通常のそれは10〜15Ω なので、通電してもインジェクター内部のプランジャーが吸引される筈はなく、当然サージ電圧も発生しない訳である。
J-OBDUが組み込まれた最近の車輌であれば、失火している気筒の特定がスキャンツールで調べられる機能(レディネス・コード)が義務付けされているので便利であるが、この年式ではそれが装着されていないので、前述のような作業が必要になる。フューエル・インジェクターを交換することで、不具合は解消した。(図2)《技術相談窓口》
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