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2013年3月
空燃比が過濃になった原因は…

アイドリング時にエンストすることがあるという、2003年式のワゴンR(UA-MH21S、エンジン型式K6Aターボ、走行距離13万km)のトラブル事例を紹介する。

エンスト後の再始動性は特に問題はないが、アクセルペダルから足を離すとエンストしてしまう。

スキャン・ツールで調べてみると、ダイアグノーシス・コードは何も異常コードを拾ってはいなかった。

エンジン制御の様子をデータモニタしたところ、空燃比制御の学習値がマイナス20%を超えている事がわかった。

排気ガステスターでの測定値も、この年式の車の規制値をはるかにオーバーしていた。

これほど空燃比を減量制御しているのもかかわらず、排気ガス濃度が高いのはいったい何故だろうか。

実はこのエンジンは、燃料供給装置が普通のものとは異なっていて、フューエル・インジェクターが燃焼室に取り付けられた「筒内噴射式」である。

普通車では数社のメーカーが採用したシステムであるが、軽自動車では珍しい。

圧縮された燃焼室内にガソリンを噴射する訳だから、それなりの燃圧でないと上手く燃料を供給できない訳である。

燃料の圧力を高めるために、一次側の電動ポンプで0.3MPaまで加圧したものを、2次側のメカニカル・ポンプで5MPa以上に高める仕組みになっている。(図参照)

スキャン・ツールでこの事を調べてみると、4MPaを下回っていた。

燃圧が低いのに燃料が濃いというのも不自然である。

エンジンを停止して、その後の燃圧の様子をモニタしてみると、急激に残圧が低下していった。

これで何がわかるかというと、メカニカル・ポンプからの燃料のリークを立証できるのである。

カムシャフトで駆動しているポンプからリークした燃料は、シリンダヘッドからオイルパンヘと下り、ブローバイガスと一緒に吸気系に吸い込まれるので、結果的に過濃混合気になってしまい、O2センサーはそれを検知してエンジンECUは減量補正する。

ところが、実際にはそれでも濃すぎる混合気によって、アイドルエンストを招いた訳である。

オイルレべル・ゲージを抜いて、排気ガステスターのプローブを差し込んでみるとHC濃度は、7,000ppmをオーバーした。

やはりリークしているのは確かである。

メカニカル・ポンプを取り換えて、ガソリンによって希釈されたエンジン・オイルとオイル・フィルターを交換すると、不具合は解消した。

〈技術相談窓口〉


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