CVTの不調(Nレンジで前進したり、前後しなくなった)によりCVTを交換した平成20年式ヴィッツ(車両型式KSP90、ミッション型式K410)のトラブル事例を紹介します。
「CVT本体にCVTのレベルゲージがないのでフルードの量の点検はどうすればいいのか?また、CVT交換後、学習をさせないといけないと聞いたがどうすればいいのか?」という電話相談です。
トヨタのCVTの場合、平成16年くらいを境にCVTのレベルゲージが廃止され、油温管理でのレベル調整になっているようです。(Super CVT-iと呼ばれるCVT)
CVTフルードの点検・交換方法は、「平成20年度版整備主任者技術研修(実習研修用)」に記載されています。また、実際にその年の技術研修でも説明済みですが、非常に分かりにくい方法です。
そこで、大まかな考え方を分かりやすいようにまとめましたので参考にしていただきたいと思います。
ただし、実際の作業は修理書等を参考にしてください。(補充する量がミッション型式によって違います)
修理書のフルードの点検・交換にはオーバーフローチューブ、オーバーフロープラグ、リフィルプラグと似たような名称の部品が出てきますので間違わないようにしてください。では、名称と役目の説明です。(構造は図1を参照)
オーバーフローチューブは、フルードの量を調整するものです。
オイルパンの中にあり、中空のパイプになっています。フルードを補充し規定量を超えると、オーバーフローチューブからフルードが流れ出ます。逆に、少ないとオーバーフローチューブからはフルードが出ません。これによってフルードの適量がわかるようになっています。
オーバーフロープラグは、オーバーフローチューブのフタの役目をしています。
リフィルプラグはフルードを入れるサービスホールのフタです。
具体的なやり方は次の通りです。
1.フルード交換の場合
@エンジン停止後、長時間放置し、フルードを室温まで下げる。(可能であれば一晩)
Aオーバーフロープラグとオーバーフローチューブを外してフルードを抜く。
オイルパンにはオーバーフロープラグとは別にドレーンプラグが付いている場合があります。その場合はドレーンプラグからフルードを抜きます。
※「CHEEK」と打刻しているほうがオーバーフロープラグです。 |
B抜き終わったら、オーバーフローチューブを規定トルク(0.8N·m)で締め付ける。
Cリフィルプラグを外す。
Dオーバーフローチューブからフルードが出てくるまで、リフィルプラグ孔からフルードを入れる。
Eオーバーフロープラグを仮締めする。
F作業内容に応じて、リフィルプラグからフルードを規定量補充する。※1
Gリフィルプラグを仮締めする。
HエアコンOFFでエンジンを始動し油温検出モードにする。※2
I※2の油温検出モード切り替えを実施し、適温になったら、エンジンをかけたまま、オーバーフロープラグを外す。
Jオーバーフローチューブからフルードが出てきたらK-Tへ、出てこなかったらK-Uを実施。ただし、出てきた量が5cc未満であれば、出てこなかったものとしてK-Uの作業を行う。
K-T フルードの流れが細くなったらオーバーフロープラグとリフィルプラグを規定値で締め付ける。
K-U リフィルプラグ孔からフルードを追加し、オーバーフローチューブからフルードが出るまで入れ、オーバーフロープラグとリフィルプラグを規定値で締め付ける。
2.作業後のフルード補充の場合
@エンジン停止後、長時間放置し、フルードを室温まで下げる。(可能であれば一晩)
Aオーバーフロープラグを外し、フルードが大量に出てきたらオーバーフローブラグを仮締めする。5cc以下しか出ない時は、リフィルプラグを外して、オーバーフローチューブからフルードが出てくるまで、リフィルプラグ孔からフルードを入れてオーバーフロープラグを仮締めする。
B作業内容に応じて、リフィルプラグからフルードを規定量補充する。※1
Cリフィルプラグを仮締めする。
DエアコンOFFでエンジンを始動し油温検出モードにする。※2
E※2の油温検出モード切り替えを実施し、適温になったら、エンジンをかけたまま、オーバーフロープラグを外す。
Fオーバーフローチューブからフルードが出てきたらG-Tへ、出てこなかったらG-Uを実施。ただし、出てきた量が5cc未満であれば、出てこなかったものとしてG-Uの作業を行う。
G-T フルードの流れが細くなったらオーバーフロープラグとリフィルプラグを規定値で締め付ける。
G-U リフィルプラグ孔からフルードを追加し、オーバーフローチューブからフルードが出るまで入れ、オーバーフロープラグとリフィルプラグを規定値で締め付ける。
つまり、最終的にはアイドル時、適温状態でオーバーフロープラグからフルードが流れ出ればいいということです。
ただし、フルードが少ないままエンジンをかけるのは良くないので、冷機時にある程度のフルード量にするために、作業内容に応じて補充を行う必要があるということです。
3.その他
トランスミッション、ECU、オイルプレッシャセンサ、デセラレーションセンサ(Gセンサ)交換時は学習値初期化、Gセンサ0点学習値、CVT油圧学習を行う必要がありますが、外部診断機が必要です。(ミッションにより必要な作業は異なりますので、作業の際は修理書で確認してください。)
《技術相談窓口》
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