エンジンが振れて調子が悪いという、2001年式のトヨタ・オーパ(TA-ZCT10、エンジン型式1ZZ、走行距離12万km)のトラブル事例を紹介する。
技術相談を持ちかけてきた工場のメカニックの話によると、3番シリンダーの点火プラグが燻ぶっており、点火コイルやインジェクターのコネクタを外しておこなう、パワーバランス・テストの結果からも、3番シリンダーが失火気味であることは確かで、点火コイルを他のシリンダーの物と交換してみたが、改善される事はなかったと云う。
圧縮圧力の測定結果も、すべて1,500Kpa前後で問題なかった。
早速スキャンツールを接続して調べてみると、DTC「P0303」(3番シリンダー失火)を検出していた。
次に、データモニタ機能を活用してECUの制御パラメータを調べたところ、空燃比補正値と学習値の合計が20%増量側になっていた。
これでも3番シリンダーが失火気味であるため、アクティブ・テスト機能で更に空燃比を強制的に濃くしてみることにした。
その結果、エンジンの振れが収まったので、やはり空燃比が薄い(オーバーリーン)状態である事は間違いない。
特定のシリンダーだけがオーバーリーンになるということは、そのシリンダーのインジェクターからの噴射量が他よりも少なくなっていると推測される。
インジェクターを取り外して点検してみると、先端の噴孔部分にデポジット類が堆積していた。(図参照)
噴孔は12個あるので、その一つ一つが非常に細かいため、汚れによる詰まりが起こりやすいのである。
全てのインジェクターを洗浄剤に浸して、数時間経つと汚れが取れて綺麗になったので、エンジンに組み付けてしばらくエンジンを運転していると、空燃比補正と学習値も良好な範囲に収まり、アイドリングも安定した。
今回の事例でお判りのように、スキャンツールをいかに使いこなすかが、トラブルシューティングの効率の良し悪しを決定するのである。
《技術相談窓口》
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