過去にも「O2センサ信号系異常」というタイトルで本誌に掲載したことがあるが、最近「P0171」(リーン異常)、「P0172」(リッチ異常)に関しての問い合わせが増えているようにあるため、再度紹介する。
ご存知のように、O2センサの出力特性は図のようになっており、燃料が濃いと1V弱の電圧を、燃料が薄いとほぼ0Vに近い電圧を出力するようになっている。
「P0171」(リーン異常)と「P0172」(リッチ異常)の検出条件を噛み砕いて説明すると、ある条件下で一定時間O2センサからの信号がリッチ(濃い)信号のまま、ないしはリーン(薄い)信号のまま変化しない時に検出されるようになっている。
したがって、O2センサが壊れて信号が変化しない場合もあれば、本当に燃料が薄い、ないしは濃い状態が続き、O2センサの信号が変化しない場合も考えられる。
前者の場合はO2センサの交換で完治するが、後者の場合は燃料が薄い、ないしは濃い原因を特定する必要がある。
空燃比が正常でなくなる原因として考えられる代表的なものは、燃圧異常、インジェクタの詰り、エアクリーナー以外からのエア吸い(エアフロメータで吸入空気量を検出する方式のエンジンに限る)、エアフロメータ異常、吸気管圧力センサ異常等が挙げられる。
したがって、これらに問題が発生していないかを一つ一つ確認していく必要がある。(関連するDTCを検出していなくても)
ところが、診断機でDTCを確認すると、「O2センサリーン異常」と表示される場合があるため、「O2センサが悪いのか?」という問い合わせが後を絶たない。
ここで一つの事例を紹介する。
「P0171」(リーン異常)を検出するという、平成13年式アベニール(車両型式GF-W11、エンジン型式QG18)のトラブル事例。
走行中に警告灯が点灯し、「P0171」(リーン異常)を出力した。
たまたま同じエンジンの車両があったので、エアフロメータを交換したが変化はなかったとのこと。
O2センサの信号電圧をサーキットテスタで測定すると、常に0Vで変化しなかった。
この状態で強制的に燃料を濃くするために、吸気ダクトにパーツクリーナーを噴射したところ、O2センサはリッチ信号(約1V)を出力することから、O2センサは正常と判断。
燃圧に問題がなかったため、エア吸いを調べたところ、ブレーキブースター用の負圧ホースが劣化し、亀裂からエアを吸いこんでいた。
負圧ホースを交換すると完治した。
このように、DTCが検出されても、DTCが示すセンサ等が直接の原因ではなく、原因が他にある場合がある。
各システムを理解しておくことが一番ではあるが、そのような状態になくても、修理書にはDTCが検出された場合の点検箇所や点検フローチャートが記載されているため、しっかりと資料を確認すれば点検が必要な箇所が見えてくる。
そのためにはもちろん、点検に必要な情報を得るためのFAINESの加入・活用は欠かせない。
技術相談窓口に「調べる時間がない」等の理由で原因のみを問い合わせるケー
スが増えているが、その場は解決できても決して実にはならない。
技術の進歩が著しい中、今が土台作りの正念場と考える。
《技術相談窓口》
CO、HCテスタの有効活用
CO、HCテスタはO2センサ系統のトラブルシュートに役立ちます。
例えば、O2センサが常にリッチ信号(約1V)を出力しているとします。
その時に排気ガスを測定し、COがほとんど検出されなければO2センサは誤った信号を出力していると判断できます。
また、反対にO2センサが常にリーン信号(約0V)を出力しているにもかかわらず高い数値のCOが検出される場合は、O2センサは正常ではないと判断できます。
これは継続検査の排気ガス測定でも同じことが言えます。
当会の予備テスター場で排気ガス濃度が基準値に収まらず四苦八苦されている車をよく目にします。
O2センサ不良が原因である場合がほとんどです。
部品がすぐに入手できる場合は良いかもしれませんが、場合によっては当日中に入手できないことも考えられます。
せっかく検査場まで来たのに、部品が入手できなかったためにトンボ返りしたのでは効率が悪すぎます。
事前に自社で排気ガス濃度を測定し、排気ガス濃度が基準値内に収まらない場合は、O2センサの信号電圧をスキャンツールやサーキットテスタで測定すると原因が判明するので、是非活用して下さい。
ただし、O2センサにも「ヒーター回路付き」と「ヒーター回路無し」のもの
があります。
O2センサが活性化するにはセンサ自体が十分温まっていることが前提となりますので、テスト前にはO2センサを十分暖めてください。(完全暖機後、エンジン回転を約2000回転にし、2分程維持する)
ただし、A/Fセンサ付きの車両の場合は、スキャンツール以外での点検はできませんので、念のため申し添えます。
|