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2014年3月
ブロアモーターが回らない時の点検方法

夏に冷房が効かないという相談の多くは、コンプレッサーが作動しない事によるものだが、この時期に暖房が効かないという相談のほとんどは、ブロアモーターが回らない不具合である。

オートエアコン装着車の場合、風量を変えるためにモーターの回転速度を自動で制御しているが、これにはモーターに印加される電圧を変える事でおこなっている。

手動で風量を切り替えるマニュアルエアコンの場合は、レジスターとスイッチによっておこなっているのに対し、オートエアコンの場合は、トランジスター等の半導体が用いられる。

今回の故障事例は、平成19年式の日産ウイングロード(DBA-Y12、エンジン型式HR15、走行距離7万km)である。

回路は図1に示すようになっており、手順としてはモーターに電源が供給されているかを調べ、それに問題がなければモーターの下流側に、30アンペア程度のヒューズを設けたジャンパ線でグランドしたときにブロアモーターが回れば、モーターは正常と判断できる。

上流側(電源側)と下流側(グランド側)とを見分ける方法は、配線図が無くても可能である。

モーター部分のコネクタを外した状態で、電圧が発生しない方が下流側になる。

今回もこの点検方法でモーターの作動確認ができたので、不具合は制御回路に存在すると考えられる。

パワートランジスター部分の8番端子の電圧を測定してみると、ほぼ電源電圧であった。

修理マニュアルで調べてみると、この部分の点検にはオシロスコープを使用するようになっている。

それを図2に示すが、MOS-FET(電界効果トランジスター)の場合、ゲート端子(図1の8番端子)をどれだけの割合でグランドするかによって、ソース(図1の6番端子)からドレイン(図1の1番端子)に流れる電流を制御している。

したがって、ゲート電圧が高いということは、ブロアーOFFの状態と同じという事になる。

8番端子をグランドしてもブロアモーターが回らない事から、パワートランジスターの故障と判断して、部品をオーダーした。

夏と冬に故障が多くなるのは、外気温度と室内の設定温度の差が大きいほど、風量をマックスで制御する期間が多くなるために、パワートランジスターに流れる電流が大きくなることで発生する、熱で壊れるのである。

パワートランジスターはブロアモーターの風によって冷却するようになっているが、エアコンのフィルターが目詰まりすると風量が低下するので、放熱が悪くなってさらに壊れやすくなってしまう。

このため、今回のような場合はパワートランジスターと一緒に、エアコンフィルターも交換することを勧める。

《技術相談窓口》


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