エンジンの始動性が悪く、始動後もエンジンの調子が悪い。また、エンジン警告灯が常時点灯しているという、平成8年式セドリック(車両型式E-PY33、エンジン型式VG30)のトラブル事例を紹介する
担当のメカニックに話を聞いてみると、DTC は正常で、ECUを中古に交換したが変化がないという。
当会にてECUの電源、アースを点検したが、問題はなかった。
にもかかわらず、エンジン警告灯が常時点灯し、さらには、アクセルのON/OFFに反応してタコメータの針が1000rpm⇔4000rpmと素早く変化していた。
ECUを交換しても症状が全く一緒であることから、何らかの制御でこの状態になっているのではないかと推測。
解説書を調べると、始動時に「クランク角センサ」の信号が3秒間入らない場合に「バックアップ制御」を行うとあった。
ただし、そこにはタコメータのことは記載されていなかったため、タコメータの動きに関してはバックアップ制御の一部であろうという推測のもと、とりあえず放置してみることにした。
以上のことから、クランク角センサとカム角センサの信号を調べたところ、どちらも出力されていないことが判明した。
クランク角センサのDTCを検出していなかったのが疑問ではあるが、DTCの検出条件に当てはまらなかったのだと思われる。
クランク角センサとカム角センサが内蔵されているディストリビュータASSYを交換すると、メーターの動きを含む全ての症状が完治した。
このことから、今回のトラブルはクランク角センサの不良により、バックアップ制御が働いていただけということになった。
最近の自動車はエンジン警告灯が点灯すると、トラクションコントロール警告灯も同時に点灯させるといった制御が見受けられる。
エンジン制御が正しく行えない以上、トラクションコントロールも正常に制御できないという意味合いだと思われる。
しかし、その関連性が理解できていない場合、2つの不具合が発生しているのだと判断してしまう恐れがある。
そのような場合、修理書を調べるとその事象について記載がされている場合もあるが、解説書にはその部品の構造・機能や作動、フェイルセーフ等の情報が記載されている。
普段の整備では必要に応じて修理書を参照することはあっても、解説書に目を通す機会は少ない。
しかし、解説書には非常に有益な情報が記載されているため、修理書とあわせて是非活用して頂きたい。
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