車のシステムは進歩する一方であり、車を整備する整備士は、その新しいシステムを理解しなければ整備は出来ないばかりか、間違った整備や間違った診断をする可能性がある。
2008年8月号と9月号に「従来と違うシステム」として4つのシステムを紹介したが、その後に問い合わせのあった従来とは違うシステムを紹介する。
【事例1】
初回車検で入庫した平成23年式ミライース(車両型式、エンジン型式KF)で、エアコンベルトの張りの点検をしているときに、どうやって調整するのだろうと疑問に思ったようで、電話による問い合わせがあった。
通常、V(リブド)ベルトの調整は、テンションプーリー、もしくはその物自体(今回の場合はコンプレッサー)を動かして調整を行なうものだが、この車にはテンションプーリーがなく、また、コンプレッサーはシリンダブロックに直付けされているので動かすことは出来ないというのである。
調べると、このエンジンのエアコンベルトにはストレッチベルトが使われていた。
このストレッチベルトは、すでに10年以上前からマツダやスバル車に採用されているもので調整不要のベルトである。
「ストレッチ」とは「伸ばす」とか「伸びる」という意味があるようで、ストレッチベルトとは文字通り伸びるベルトのことである。
よって、取り付けるときはベルトを伸ばして取り付け、外すときも、伸ばしながら取り外すというものである。(スバルは切って外すようになっている。)
ただ、伸ばすといってもただ単に伸ばして取り付けるのではなく、SSTを使い正しく伸ばしながら脱着するのである。(図1)
けっしてドライバーなどを使い無理やり取り付けてはいけない。
このSSTは汎用品も販売されているが、メ−カーによってはベルトに付随しているようである。
※SST の検索は「ストレッチベルトリムーバー&インストーラー」で行ってください。中には脱着時の動画もあります。
【事例2】
スロットルボデーを清掃したらアイドル回転が下がらなくなったという平成12年式クラウン。(車両型式GH-JZS171、エンジン型式1JZ-GE)最近では電子制御式スロットルバルブが多く採用されており、スロットルバルブ周りの清掃を行うとこのような現象が起こる。
これはアイドル回転制御には学習機能があり、スロットルバルブの汚れによるアイドル回転低下を補正するために、イニシャルのスロットル開度を開いているせいである。
その状態で汚れがなくなれば、吸入空気量が増え、アイドル回転が上がるわけである。
このような場合、日産車では急速TAS学習と呼ばれるものを行うと、基準のアイドル回転になるのだが、他のメーカーにはこういった作業を行わなくても、自然と学習を行い基準のアイドル回転になることが多い。
しかし、中には今回のように数十分たっても回転が下がらないという事例がある。
こういった場合、バッテリのターミナルを外したり、バックアップ用のヒューズを抜いて学習値をリセットすればいいわけである。
そのことを依頼者に伝えると、そうだと思い「EFI」ヒューズを10秒以上抜いてみたそうであるが変わらないという。
従来のトヨタ車であれば、確かにエンジンECUをリセットするのに「EFI」ヒューズを抜けばよかったが、平成10年前後の電子制御式スロットルバルブを使っている車は「EFI」ヒューズと「ETSC」ヒューズの2つを同時に抜かないとリセットされないようになっている。(EFI系のヒューズが2個ある場合があるので注意。また、「EFI」ではなく「EFIMAIN」となっている場合もあるので、修理書での確認が必要。)
2つのヒューズを抜いてリセットするとアイドル回転は下がった。
なお、従来はヒューズを抜く時間が10秒以上だったが、このタイプだと60秒以上となっているので合わせて気を付ける必要がある。
《技術相談窓口》
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