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2015年7月
従来と違うシステムW

5月号に続き今月も「従来と違うシステム」を紹介。

 

【事例1】

車は平成18年式ムーブ(車両型式L175S、エンジン型式KF)で、バルブクリアランスを調整したいが、調整用のシムがないという問い合わせ。

従来のバルブリフターは、バルブクリアランス調整用のアジャスティングシムを使っているタイプ(図1)が多かったが、最近ではシムレス・リフタータイプ(図2)が増えてきた。

このシムレス・リフターは、リフター頂面厚が5.16mm〜5.74mm間で0.01mm、もしくは0.02mmごとに46種類のものが設定されている。

バルブクリアランスを調整する場合、従来のシムを使っているタイプはシムだけを交換すればいいのだが、シムレス・リフタータイプの場合は、リフター頂面厚の測定を行い、基準値のバルブクリアランスになるようなバルブリフターをASSY交換しないといけない。

 

【事例2】

フューエルメーターが動かないという平成16年式ワゴンR(車両型式UA-MH21S、エンジン型式K6A)フューエルレベルゲージの中間コネクタがリヤシートの下にあり、そこをアースしても針が上がらなかったそうである。よって、メーターの不良と思い交換したのだが、症状は変わらなかったのでフューエルレベルゲージも交換したという。しかし、やはり動かないということで持ち込まれた。

フューエルレベルゲージの信号端子をアースすれば、通常、メーターはF 側に振り切るはずである。ただし、その場合、その端子とメーター間に断線や接触不良がないことを確認する必要がある。

キーをONにし、中間コネクタ部で電圧を測定すると約5Vだった。ということはメーター間との断線は無い。メーター部で点検しても同じ5Vだった。接触不良も無いということである。その信号線をアースすると、当然0Vになったのだが、フューエルメーターは全く動かなかった。依頼者の言うとおりである。

こうなるとメーターの不良と考えるのも当然である。念のためにメーターのコネクタを外し、フューエルレベルゲージの抵抗を測定してみた。

すると、基準値がF ラインで10Ω、中央で65Ω、Eラインで120Ωに対して、実際の測定値は170Ω だった。燃料は10L以上入っているということなので、本来、65〜120Ω内じゃないといけないはず。

それがEラインの基準値である120Ωより大きいということは、燃料が入っていないということなので、当然メーターは動かない。フューエルレベルゲージの不良である。

メーターも不良、フューエルレベルゲージも不良。そんなことが偶然起こるものなのか?この車のメーターには、配線図(図3)からもわかるように、メーターECUを使っている。エンジンのセンサー類が故障した場合、フェイルセーフになるように、もしかしたら、信号線をアースしたらフェイルセーフが働き、フューエルメーターが動かないのかもしれないと思った。

そこで、修理書にある基準値の抵抗をフューエルレベルゲージの代わりに入れてみたのである。するとほぼ指示された位置になった。(10Ω でFライン、65Ωで中央値)メーターは正常だったのである。

結局、中古でとったフューエルレベルゲージがこの車の物ではなく、合わないことが判明した。新品のレベルゲージに交換すると正常に動くようになった。同じ型式の車でもエンジンが違ったり、年式が違うと見た目は同じでも特性が違うのでご注意を。

念のため、正常になった状態でフューエルレベルゲージの信号線をアースしてみた。すると、半分近くをさしていた針はEラインを下回った。

やはり何らかのフェイルセーフが働いているようである。

この車のようにメーターECUを使っている場合、信号線をアースしてもメーターが上がらない車もあるので従来のやり方では駄目である。修理書にある基準値の抵抗を入れて調べる必要がある。

《技術相談窓口》


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