スキャンツールでダイアグノーシスの異常コードが消えないという事例を紹介する。
一般的にダイアグノーシスの点検は、スキャンツールを使う方法と特定の操作(ある端子同士を短絡したり特定の手順でアクセルペダルを操作する)で行う方法がある。
(中にはスキャンツールでしか行えない車種もある。)
また、ダイアグノーシスで表示した異常コードの消去方法には、スキャンツールを使う方法とECU のバックアップ電源を遮断する(特定のヒューズを抜いたりバッテリターミナルを外す)方法がある。
消去方法はどちらでも構わないのだが、バックアップ電源を遮断する方法は、ECU が長い間に学習した内容まで消えてしまうし、バッテリターミナルを外すと、学習値の消去に加えて、パワーウィンドなどの各種の学習を行う必要があるので、出来ればスキャンツールがあればそれを使った方が良い。
通常、スキャンツールでダイアグノーシスの点検ができればスキャンツールで異常コードの消去が出来る。
しかし、2例ほどスキャンツールでの異常コードの消去が出来ないという電話相談があった。
【事例1】
バッテリ不良によりバッテリ交換をしたのだがeco IDLE ランプが点滅するという平成23年式ミライース(LA300、KF)。
eco IDLE ランプが点滅するということは、アイドルストップシステムに異常があるということである。
そこでスキャンツールでダイアグノーシスを点検すると、コードP1602「始動時電源電圧低下異常」を表していたそうである。
バッテリが上がっていたのでこのコードを表示するのは当然である。
しかし、バッテリを交換してスキャンツールで異常コードの消去作業を行っても、eco IDLE ランプが点滅したままになりコードP1602が消えないというのである。
バッテリを交換しても、ECU のバッテリ電圧が低ければこのコードを出すのでデーターモニタでバッテリ電圧を調べてもらった。
しかし、約14V であり問題なかった。
バッテリ交換時には、なにかの作業が必要かもしれないので、ファイネスで調べてみたが、ECU やスタータを交換したときの作業はあったが、バッテリを交換した時の作業は何もなかった。
異常コードの消去はヒューズを抜く方法もあるだろうと思い、資料を調べていたら驚くことが書かれていた。
それは「P1602(始動時電源電圧低下異常)が出力している場合は、DS−Uによる消去ができないため、ヒューズ抜き取りによる消去を実施する」となっているのである。
つまり、ダイハツ専用のスキャンツール(DS−U)でも異常コードの消去が出来ないのである。
このことを相談者に伝え、「ECU B」と「B/UP」ヒューズを60秒以上抜き取ってもらった。
するとeco IDLE ランプの点滅はなくなり正常コードを表示するようになったというのである。
【事例2】
チェックランプが点灯し、ダイアグコードP2002(DPR 異常)を表示するという平成19年式ハイエース(KDH201V、1KD)。
ダイアグコードの消去を行い強制再生をしたいのだが、スキャンツールを使っての異常コードの消去が出来ないという相談。
このP2002を表示した場合は、PMフィルタの詰りが限度を超えた場合に表示するので、異常コードの消去を行い強制再生すればいいのだが、その消去が出来ないという。
事例1のダイハツの件があったのでファイネスで調べてみた。
コードP2002の内容を確認すると、注意書きがありその中には「P2002/94が出力するとフェイルセーフにより出力制限が働き、PM 強制再生制御が禁止される。このとき、EFI ヒューズまたはバッテリターミナルを切り離し、60秒以上経過後に接続するとPM 強制再生が可能になる。ただし、エンジンオイル量不適切が原因の場合は、正常判定後、PM 強制再生が可能となる。」という記載があった。
やはり、コードP2002に関しても、スキャンツールによる消去ではなく、「EFI」ヒューズを60秒以上抜くことによって消去できるとなっていた。
この2つのトラブルコードに関しては、同じメーカーであれば車種は違っても、やはりスキャンツールでは消去できない可能性がある。
理由はわからないが、スキャンツールで異常コードの消去が出来ない場合は、ヒューズ抜き、またはバッテリ端子を外すと消去できるかもしれない。
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