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2016年9月
スピードメーターを動かすのはABS システム

スピードメーターが動かなくてABS警告灯が点灯するという平成13年式プリメーラ(車両型式TA-TP12)のトラブル事例を紹介する。

事前に電話相談があり、スピードメーター用の車速センサーはどこにあるのかという問い合わせがあった。

スピードメーターを動かすには、以前はトランスミッションにあるスピードセンサーの信号が直接メーターに入力され、その信号でスピードメーターを動かしていた。(図1)

しかし、近年ではスピードメーターを動かすのはABS のコントロールユニット(C/U)であり、そのABS・C/U は各車輪にあるABS 用のスピードセンサーの信号を基に車速を計算しているタイプが多い。(図2)

よって、スピードメーター用の直接のスピードセンサーはないということになる。

この車のシステムを調べるとやはりABS アクチュエータC/U からの車速信号がメーター内の制御回路に入力されスピードメーターを動かしていた。

また、制御回路は車速信号が必要な他のユニット(エンジンやA/T 等)に車速信号(2パルス)、車速信号(8パルス)として供給していた。(図3)

よって今回のようにスピードメーターが動かなくてABS 警告灯が点灯しているとなると、まずはABS システムから点検する必要がある。

また、スピードメーターが作動しない場合、原因がメーター側なのか信号側なのかは、オド/トリップメーターが作動するかどうかも参考になる。

オド/トリップが動くとなると、信号は入力されているということになるので、メーター不良の可能性が高い。

スピードメーターもオド/トリップも動かないとなると、信号側の可能性が高くなる。

今回は、オド/トリップも作動せず、ABS 警告灯も点灯していることより、信号側の点検を行うことにした。

まず、ABS のダイアグノーシスを点検しようと思い、スキャンツールを接続したが通信不能であった。

試しにエンジンやA/T のシステムを調べると普通に通信できた。OBDUコネクタの電源やアース、また通信線は問題ないということになる。

車種によってはこのスキャンツールが対応していないシステムもあるので、対応車種をスキャンツールメーカーのホームページで確認したが、この年式のプリメーラには対応しているようになっていた。

念のために他のスキャンツールも使ってみたがやはりABS だけは通信できなかった。

となるとABS アクチュエータ・C/Uが作動していない可能性が高い。

コントロールユニットの電源とアースを調べたが問題なかった。

こうなるとコントロールユニットの不良としか考えられない。

コントロールユニットが作動していないので、スピードメーターを作動させることができないと思われる。

念のためにスピードメーター回路を点検しておくことにした。

ABS アクチュエータ・C/U のコネクタを外し、メーターにつながっている車速信号端子をアースと素早く短絡/解放を繰り返した。

こうすることでABS アクチュエータ・C/U の代わりに疑似信号を作り出せるのである。

その結果、スピードメーターが動くことが確認された。

つまり、ABS アクチュエータ・C/U以外のスピードメーター回路は正常ということになる。

これでABS アクチュエータ・C/U の不良が確定的となった。

予算の関係で中古品での交換となったが、交換後はABS 警告灯も点灯しなくなり、スピードメーターも正常に動くようになった。

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