実践!整備事例一覧 > 整備事例  

Page 1
2017年4月
エンジン始動不能はオイル漏れが原因!

アイドリング中に突然エンジンが止まって、その後はまったく始動できなくなった、平成15年式のカローラ・フィールダー(車輌型式UA-NZE121G、エンジン型式1NZ、走行距離11万km)のトラブル事例を紹介する。

基本点検の結果、点火火花が飛ばずフューエル・インジェクターの作動音もしていなかった。

スキャンツールを接続してDTC を調べてみると、異常コードは検出されていなかった。

スキャンツールをデータモニター画面に切り替えてクランキングしてみると、エンジン回転速度はゼロのままであった。

この事からクランク角センサーの信号に問題があると考えられるが、前に述べたようにDTC はその事を検出していない。

これに疑問を抱く方が多いのだが、エンジンECU が異常として認識するには、前もって決められた「検出条件」が存在するからである。

それを示すものが図1であり、クランク角センサーの信号の異常検出は、「始動時」と「エンジン回転中」によって異なるのである。

今回の場合は、そのいずれにも当てはまらないためにDTC が異常検出しなかったものと考える。

試しにクランキングを5秒以上続けたのちのDTC を調べると、「P0335」を表示した。

クランキングしてもエンジンが掛らない場合、ほとんどの人は3秒前後でクランキングをやめてしまうので、異常検出されない事が多いのである。

したがって、不具合現象を再現させる際には、それぞれの検出条件を知った上でおこなう事が大事である。

クランクシャフトの前端部に設けられたセンサーの点検をおこなうために、コネクターを抜いた途端にオイルが流出してきた。

水であれば電気を通すので信号が欠落することは理解できるが、オイルは電気を通さないものと思いがちである。

しかし、燃焼ガスに含まれるカーボンや摩擦によって生じた金属粉などによって、オイルの絶縁能力は低下している。

これが端子間に溜まると、短絡状態になってしまう事で信号が欠落してエンジン始動不能に至る訳である。

新しい部品が届いたので以前の物と比較してみると、図2のように外観が変わっている事に気がついた。

なにか情報がないものかとFAINESで調べてみると、リコールがある事が判明したが、この車はその対象ではなかった。(図3参照)

しかし、形状と部品番号が変更されているという事は、なんらかの改善が施されているものと考えるのが自然である。

同じような構造のセンサーの内部からのオイル漏れは、他のメーカーの車でも体験しているので、コネクター外周が湿っている場合は、確認する事が重要である。

《技術相談窓口》


実践!整備事例一覧 > 整備事例
UP