走行中にだんだんとエンジンの吹き上がりが鈍くなり、エンストはしないものの、まともな走行ができなくなるという、平成20年式のエブリィ・バン(車輛型式EBD-DA64V、エンジン型式K6A、走行距離11万km)のトラブル事例を紹介する。
スキャンツールを接続して基本的な部分から調べてみると、DTC に異常コードは検出されていなかった。
燃料の圧力を観測できるようにして、スキャンツールでデータモニターしながら試運転を繰り返していると、不具合現象が発生した。
その時の燃圧は300KPa で問題はないが、空燃比補正がマイナス25%で空燃比学習値はマイナス10%に達していた。
合計マイナス35%もの燃料が減量されたのでは、エンジンはまともに出力は出せないわけである。
ではなぜそのような減量がおこなわれているのかというと、それはO2センサーの信号が空燃比が濃い(リッチ)という情報をエンジンECU に入力するからである。
その様子を図1に示すが、注目してもらいたいのは、減速走行時に燃料カットしているにもかかわらず、O2センサーの信号電圧がリッチ信号を出力していることである。
このあとにアクセルペダルを踏み込むと、減量制御が働いているためエンジン不調になるのである。
O2センサーを一時的に別の物と交換して様子をみるために、図2に示すコネクターを取り外してターミナルをばらばらにした物を用意している。
国産車の多くはデンソー製かNTK 製を用いているので、配線の色と回路がわかっていれば、結線は可能である。
実験的に取り換えて走ってみると信号は正常になり、不具合は発生しなくなった。
O2センサーは、スパークプラグ同様に非常に厳しい環境下に置かれている「酸素濃淡電池」なので、半永久的に使える物ではない。
正しく機能しているかどうかは、定期点検の際に排気ガス濃度を測定するようになっているが、今回とは逆に制御された場合は不具合として感じない代わり、無駄な燃料を消費しているわけである。
当会の予備テスター場においても、排気ガスが下がらず車検に通らないという事案が絶えないこと等から考えても、数年ごとに交換するのが望ましいと思われる。
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