フート・ブレーキを操作したあとに車が重く感じるという、平成15年式のアクセラ(車輌型式UA-BKEP、エンジン型式LF、走行距離11万km)のトラブル事例を紹介する。
半年くらい前からこの症状が発生しており、ひきずりが起きている前輪左右のディスクブレーキのピストンの戻り不良を疑って、シールなどの部品を交換してみたが、様子は変わらなかった。
引きずりが発生している時に、前輪ブレーキのブリーダ・プラグを緩めると引きずりが解消するので、マスターシリンダーとマスターバックを交換してみたが、解決に至らず車が持ち込まれてきた次第。
エンジンを始動して、ブレーキペダルを踏んでセレクトレバーをP からD レンジに入れて、ゆっくりブレーキペダルを離しても、クリープ現象が感じられない。
アクセルペダルを少し踏んでやると、発進できるようになる。
N レンジのままでエンジンを停めて、しばらく放置してからエンジンを始動し、ブレーキペダルの操作なしでD レンジにセレクトすると、車はスッと発進できる。
この事から前輪ブレーキの液圧回路に、戻り不良があると推測される。
車をリフトアップして、ブレーキペダルの操作を繰り返しながらひきずり点検を行った結果、前輪右側だけに引きずりがある事が確認できた。
こうなると、その要因は一つしか考えられない。
それは、ABS アクチェータである。
軽自動車でも当たり前のように装着されているABS だが、そのアクチェータの内部はブラックボックス化されているとともに、定期交換部品でもないのでメンテナンスされる機会が無いのが実情である。
スキャンツールのアクティブテスト機能を使って、ひきずりが発生している前輪右側の「保持ソレノイド・バルブ」を閉じ側に強制駆動して、マスターシリンダーからホイールシリンダーに液圧が作用しないようにしてブレーキペダルを踏んでみると、思ったとおりひきずりは発生しない。
これまでの点検結果から、右前輪の保持ソレノイド・バルブ部分のポートが詰まり気味になり、オリフィス作用によってひきずりが発生したものと考える。(図参照)
過去には、他メーカーの車で完全に詰まってしまって「ブレーキペダルを踏んでもエア抜きができない」という事例も数台経験している。
このような事態を防ぐには、ブレーキフルードを定期的に交換する事が大切である。
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