当会の技術相談窓口には、毎月130件前後の問い合わせがあるが、ここ数カ月で増加傾向にある事例について説明する。
それはDTC「P0420」(触媒劣化)である。
表1にその内容を示すが、そのDTCが検出されるロジックについて先に述べておく。
平成20年10月のJ-OBDU規制以降に設けられたDTC のひとつで、その検出には触媒の前後にそれぞれO2センサを設け、そのふたつのセンサによって検出された酸素(O2)濃度の変化を監視することで触媒の劣化度合いを判断している。
エンジン本体や制御系に問題がないかぎり、酸化反応に必要な酸素が排気ガスと共に触媒内に供給され、酸化反応によってどれくらい酸素が減少したのかを、触媒出口側のセンサによってチェックしている訳である。
一例としてダイハツ車の修理書に記載されている検出ロジックを紹介すると、『リヤO2センサ信号の電圧変動が大きく、フロントO2センサに対してリヤO2センサ信号の反応遅れが短い状態が継続した時』となっている。
仮に理論空燃比で定速運転している場合のフロントO2センサは、0.5V を中心にして規則正しく変化し、触媒内で酸化反応が行われると酸素が減少することで、リヤO2センサの信号電圧は0.5Vより高い信号電圧を出力したままになる。(図参照)
しかし走行中はエンジン回転や負荷が変化することで空燃比は変化するため、リヤO2センサはフロントO2センサの信号より遅れて変化するはずである。
反応遅れが短いということは、酸化反応が行われずに排気ガスが触媒内を素通りしていることになる。
ある工場で点検したところ、ふたつのセンサの信号波形がほぼシンクロしていたという情報も聞いている。
前述したように、リヤO2センサの信号電圧が重要な鍵を握っているので、まずはその信号を調べることが先決である。
リヤO2センサの信号が正しくないと、DTC を信じて触媒を交換しても解決しないことになるので、注意が必要である。
それ以外にもさまざまな要因が考えられるので、表2を参考にしてもらいたい。
触媒劣化はそれ自体が悪くなることよりも、表2に示す要因にあてはまることが少なくないので、エンジン本体やフロントおよびリヤO2センサの機能をスキャンツールでデータモニターすることがポイントである。
エンジンオイルも重要で、ZDTP を多く含むものは「触媒被毒」の影響があるので、使用は避けたい。
オイル消費が多いことも触媒には良くないので、こまめな点検が必要になる。
今から約40年前に、排気ガスの後処理装置として触媒が登場したが、初期のペレット型は車検ごとに内部の詰め替えを行っていたが、それから数年後に現在と同じモノリス型になってからは、メンテナンスフリーになった。
その当時の排気ガス規制値と触媒の性能は、現在のものとは比較にならないと思うが、使用過程車においても当初の排気ガスレベルを維持するためには、触媒も定期的なメンテナンスが必要なのかもしれない
《技術相談窓口》
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